ヒューディブラス的

ヒューディブラス的とは、17世紀イングランドの詩人サミュエル・バトラーが、彼の代表作である長編詩『ヒューディブラス』（1672年）のために創り出した独自の詩形を指します。この名称は、作品名そのものに由来しており、バトラーはこの形式を、大真面目なスタイルでくだらない事柄を描写することで滑稽さや批判を生む「擬似英雄詩」（mock-heroic poem）という文学ジャンルにふさわしいものとして考案しました。

この詩形を特徴づけるのは、その独特なリズムと押韻の規則です。多くの英雄詩が弱強五歩格（iambic pentameter）という1行に10音節を持つ韻律を用いるのに対し、ヒューディブラス的は弱強四歩格（iambic tetrameter）を採用しています。これにより、一行が短くなり、より簡潔で、あるいは意図的にぎこちない響きが生まれます。押韻構造は、二行ずつペアになって押韻する連句（couplet）形式であり、「aa bb cc dd...」という構成をとります。この点は、一般的な英雄詩形と共通しています。

しかし、ヒューディブラス的が特に独創的であるのは、その押韻の巧みな使い方にあります。バトラーはユーモアや風刺の効果を高めるために、女性韻（feminine rhyme）を頻繁に用いました。女性韻は、単語の末尾の音節だけでなく、その前の音節も含めて押韻するもので、例えば「flowing」と「going」のようなペアです。これにより、押韻の響きが豊かになると同時に、時に予想外の、あるいは少しずれた響きが生じ、読者に驚きや笑いを誘います。

さらに、押韻する単語の組み合わせ自体も、特有の効果を生み出します。バトラーは、一見関連性のない、あるいは不釣合いな語句をペアにすることで、ユーモアや痛烈な皮肉を表現しました。例えば、『ヒューディブラス』の中から引用される例として、「swear for」（誓う）と「wherefore」（なぜ）や、「ecclesiastic」（聖職者）と「instead of a stick」（棒の代わりに）といった押韻があります。これらのペアは、単に音が似ているだけでなく、その並置によって意外性や不条理な感覚を生み出します。また、「dwelling」（住居）と「colonelling」（大佐として行動する）のように、押韻のために単語を分割したり、行の途中で不自然な区切りを入れたりする手法も用いられ、これもまた特有のぎこちなさや滑稽さを強調します。

これらの押韻の技巧は、単に音響的な遊戯に留まらず、押韻された語句間に隠された比較や関連性をほのめかす意図を持っています。特に痛烈なのは、宗教的な熱狂を描写する文脈で「drunk」（酔っぱらい）と「punk」（娼婦）という言葉が押韻される例です。これは、ピューリタンたちの宗教的陶酔が、世俗的な酩酊や性的な放蕩と同じような、理性に基づかない衝動的な性質を持つものであることを示唆しており、彼らの信仰に対するバトラーの嘲笑的な視点を鮮やかに描き出しています。

このような構造と表現の特徴から、ヒューディブラス的は歴史的に主に風刺詩の形式として使用されてきました。サミュエル・バトラー自身が、清教徒革命後の社会や宗教的過激主義を批判するためにこの詩形を最大限に活用しました。彼の後も、多くの詩人が社会や政治、人間の愚かさを嘲笑する際にヒューディブラス的を採用しました。特に有名なのは、18世紀の偉大な風刺作家ジョナサン・スウィフトです。彼はその詩作のほとんどにおいて、このヒューディブラス的を用いており、この詩形が持つユーモアと風刺の力を遺憾なく発揮しました。

結論として、ヒューディブラス的は、サミュエル・バトラーによって擬似英雄詩と風刺のために確立された、弱強四歩格と二行連句を基盤としつつ、特に意外性のある押韻や女性韻の多用によってユーモア、ぎこちなさ、そして痛烈な批判を生み出す独自の詩形です。その特徴的な響きと構造は、その後のイギリス文学、特に風刺文学において重要な影響を与えました。

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