ヒューバート・H・ハンフリー・メトロドーム

ヒューバート・H・ハンフリー・メトロドーム：多目的ドームの記憶

ヒューバート・H・ハンフリー・メトロドーム、通称メトロドームは、アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリスに存在した多目的ドームです。その名の通り、野球やアメリカンフットボールなど、様々なスポーツの舞台として利用されました。一時期は、アメリカ最大のショッピングモールであるモール・オブ・アメリカが命名権を取得し、「モール・オブ・アメリカ・フィールド・アット・ザ・ヒューバート・H・ハンフリー・メトロドーム」という名称が用いられていました。

ミネソタ・バイキングス（NFL）、ミネソタ・ゴールデンゴーファーズ（NCAA）、ミネソタ・ティンバーウルブズ（NBA）、そしてミネソタ・ツインズ（MLB）といった、名だたるチームがメトロドームを本拠地としていました。また、空気圧で膨らませる屋根は、日本の東京ドームのモデルになったことでも知られています。

建設の背景と特徴

メトロドームは、ミネソタ・ツインズとミネソタ・バイキングスの旧本拠地メトロポリタン・スタジアムの老朽化、そしてミネソタ州特有の厳しい気候に対応するために建設されました。元副大統領であり、ミネアポリス市長も務めたヒューバート・H・ハンフリーにちなんで命名されています。

通常のアメリカンフットボールと野球の兼用スタジアムとは異なり、メトロドームではサイドラインと三塁ファウルラインが平行に設計されていました。スタンドはアメリカンフットボールを優先した長方形の形状で、野球開催時には右翼部分の座席が収納される構造でした。そのため、右翼スタンドは高い位置にあり、フィールドもやや狭くなっていました。この狭さを補うため、右翼フェンスは7メートルに設定されていました。

老朽化と解体、そして新たな幕開け

老朽化が進んだメトロドームは、まずミネソタ・ツインズが2009年シーズンをもって使用を終了し、2010年シーズンからは新本拠地ターゲット・フィールドへ移転しました。ミネソタ・バイキングスも2013年シーズンを最後にメトロドームを離れ、2014年1月に解体されました。解体後、同じ敷地にはバイキングスの新たな本拠地となるUSバンク・スタジアムが建設され、2016年7月22日に開場しました。

特殊な屋根構造

メトロドームの屋根は、テフロン加工されたガラス繊維で作られた340トンの膜を空気圧で支えるという、当時としては画期的な方式を採用していました。この方式は、他の工法に比べて工期や費用を大幅に削減できるというメリットがありました。

しかし、その構造ゆえに、屋根の破損事故も度々発生しました。1981年と1982年には、積雪により屋根が破損し、1983年4月には同様の事故で野球の試合が中止になる事態も発生しました。2010年12月には、猛吹雪によって屋根の一部が崩壊し、NFLの試合が別会場に変更されるという事態も起きました。

MLBでの特徴と出来事

メトロドームは、内部の空気が乾燥しているため打球が飛びやすいと言われ、「ザ・ホーマードーム」という愛称で呼ばれることもありました。しかし、実際のパークファクターは1を下回っており、投手有利な球場でした。また、打球が天井に当たることも多く、本塁打性の打球が天井に当たって内野フライになるという珍しいプレーも起こりました。

1984年には、デーブ・キングマンが打った打球が屋根の排水溝に入り、エンタイトルツーベースとなる珍事も発生しました。このボールは、後に野球殿堂博物館に寄贈されています。

観客動員の低迷から、MLBの試合時には外野2階席にカバーがかけられていました。

主要な出来事

1982年4月3日：フィリーズとのオープン戦で開場
1982年4月6日：初のMLB公式戦開催（マリナーズ 11-7 ツインズ）
1985年7月16日：オールスターゲーム開催
1993年9月16日：デーブ・ウィンフィールドが3,000本安打を達成
2000年4月15日：カル・リプケン・ジュニアが3,000本安打を達成
2007年6月28日：フランク・トーマスが500本塁打達成
2009年10月6日：デトロイト・タイガースとの同率地区優勝決定戦開催
ワールドシリーズ開催：1987年、1991年

アメフトでの出来事

1982年9月12日：初のNFL公式戦開催（バイキングス 17-10 バッカニアーズ）
1992年1月26日：第26回スーパーボウル開催
* 2010年12月12日：ジャイアンツ戦が屋根崩壊のためデトロイトで代替開催

メトロドームは、そのユニークな構造と数々の出来事で、多くの人々の記憶に残るスタジアムでした。解体後、新たなスタジアムが建設されましたが、メトロドームの歴史は語り継がれていくことでしょう。

もう一度検索