ヒューマン・ビーイン

ヒューマン・ビーインとは：愛と平和を求めたムーブメント

ヒューマン・ビーイン（Human Be-In）は、1967年1月14日にアメリカ西海岸で始まった、社会における人間性回復を求める人々の集会です。「ビーイン（Be-In）」とも略されます。

1960年代のムーブメント

ベトナム反戦運動が激化していた1966年から67年頃、学生たちの座り込み集会「Sit-In」に着想を得て、人間の集会「Human Being-In」、略して「Human Be-In」が考案されました。企画者は、アーティストのマイケル・ボーエンです。

サンフランシスコで始まったビーインは、1967年9月にニューヨークのセントラルパークでも開催され、ムーブメントとして全米に拡大、各地で次々と開催されました。1967年の夏は、ビートルズのアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のリリースも重なり、「サマー・オブ・ラブ」と呼ばれました。この流れは、1969年に最大のビーインと言われる「ウッドストック・フェスティバル」で頂点を迎えました。

ビーインには、詩人、政治家、ミュージシャン、前衛芸術家、快楽主義者、ヒッピーなど、2～3万人が参加し、マスコミにも大きく取り上げられました。この影響で、アメリカでは「-In」という接尾語が「集会」の意味で使用されるようになります。「Laugh-In」というお笑い番組が制作されたり、ジョン・レノンとオノ・ヨーコが結婚に際し、反戦の意思を示すハプニング「ベッド・イン」を公開したり、市民による抗議集会「ダイ・イン」も行われました。

ビーインは、ヒッピー・カルチャーを中心とする平和運動であると同時に、1960年代のカウンターカルチャーの重要なコンセプトである、中央集権ではなく分散型の社会、個人のエンパワーメント、意識拡大、地球環境保護といった新しいパラダイムを提示しました。世界の変化を予感した人々は、この動きを「ニューエイジ（新しい時代）」と呼びました。以降、カウンターカルチャーを支持する若者が急増し、アメリカ国内だけでなく、日本、ドイツ、フランス、ロシアなど海外にも大きな影響を与えました。

また、反戦運動は、それまでの過激なデモ活動から、ヒッピーの平和志向に訴えかける方針（非暴力主義）に転換し、両者の歩み寄りが進みました。

デジタル・ビーイン

1989年には、マイケル・ゴズニーらによって、インターネットとデジタル・メディアを活用した祭典「デジタル・ビーイン」として、新たな形で再生しました。「先端技術によって社会的良心、芸術・精神と人間の進化がもたらされる」という理念に基づき、愛と平和の運動として展開されました。1960年代のビーインの哲学が受け継がれています。

60年代のビーインがヒッピーカルチャーと密接な関係を持っていたように、デジタル・ビーインはグローバルなレイブ・カルチャーと結びついています。イベントは、トークやスピーチ、詩の朗読から始まり、最後はダンスパーティで締めくくられます。

西海岸のデジタル・アンダーグラウンドから生まれたこのイベントは、1990年代にはマイクロソフトなどがスポンサーにつく巨大なイベントへと発展しました。1995年には、幕張メッセで開催された「マック・エキスポ」で、日本でも開催されました。

国連の世界人権宣言50周年記念と連携し、サイバー・スペース上の人権運動にも参加しました。

現代のビーイン

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件を契機に、新しいヒューマン・ビーイン（New Human Be-In）の始まりを告げるメールが全世界20万人に送信されました。サンフランシスコ、東京をはじめ、ロンドン、オーストラリアなどでビーインが再開されました。

東京では、複数のNGOが中心となり、個人とNGOが時間と場所を共有するギャザリング形式で、毎年9月11日に最も近い日曜日に明治公園で開催されています。2006年の東京のビーインには、過去最多の6,500人が参加しました。

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