ヒレナガゴンドウ

ヒレナガゴンドウについて

ヒレナガゴンドウ（Globicephala melas）は、鯨偶蹄目ハクジラ亜目に属する大型のイルカで、特にその特徴的な胸びれが印象的です。この胸びれは体長の15～20%を占め、鎌形をしています。また、頭部の形状が黒い鍋のような形をしていることから、一部の地域では「pothead whale」と呼ばれています。

形態と大きさ

ヒレナガゴンドウは、他のハクジラ類と比較しても体長が大きく、シャチに次ぐ存在となっています。メスとオスの性的二形が見られるこの種では、オスが最大7.6メートル、体重は4,500 kgに達するのに対し、メスは最大6メートル、体重は2,500 kgです。体色は主に黒や暗灰色で、特に喉元や腹部には灰色や白の斑点があり、これが錨の形を描いています。背ビレは分厚く、体の三分の一の位置にあります。

生態と社会性

ヒレナガゴンドウは非常に社会的な生き物で、群れで生活します。その群れの規模は数体から1,000体以上に及ぶことがありますが、一般的には20～150体の群れが観察されます。研究によれば、通常は8～12体の長期的な社会的な集合体を形成します。特にフェロー諸島沖で行われた遺伝子調査では、母系構造があることが示されています。

この種は、他のイルカと共に行動することが多く、バンドウイルカ、タイセイヨウカマイルカ、ハナゴンドウと同じ行動をとることが確認されています。食性は一般的に頭足類が中心ですが、地域によっては魚も食べることがあります。北大西洋では主にスルメイカを捕食しています。

ヒレナガゴンドウは活発な動きをし、水面でのしぶきを上げたり、顔を水面から出したりする姿がよく見られます。また、時には水面を飛び跳ねることもあります。興味深いことに、ゴンドウクジラ属は時折集団で座礁することで知られており、特にニュージーランド沿岸では12月から3月にかけて多数の個体が打ち上げられる現象が観察されています。この現象の原因ははっきりしていませんが、強い社会的絆が一因と考えられています。

コミュニケーション

ヒレナガゴンドウは多彩な声を発し、特にエコロケーション・クリック音を用いることで周囲の状況を把握します。これにより、暗い水中環境でも効果的に情報を集められます。声の周波数は1 kHz以下から20 kHzまで広範囲にわたり、さまざまな音を使い分けながらコミュニケーションを行います。

繁殖

この種のメスは約6～7歳で性成熟を迎え、オスはその倍の12年ほどで成熟します。母子は強い絆を持ち、子供は最大27ヶ月間親から授乳を受けます。妊娠期間は12～15ヶ月で、出産は3～5年に一度行われます。子供は出生時に体長約1.8メートル、体重は約102 kgです。

分布

ヒレナガゴンドウの亜種は2つ存在し、北大西洋の「Globicephala melas melas」と南半球の「Globicephala melas edwardii」に分かれます。北大西洋ではオーストラリア東部やカナダ沿岸、アゾレス諸島、フェロー諸島、さらにはヨーロッパ沿岸に広く分布しています。南半球でも広く確認されており、南緯19度から60度、さらには南極周辺でも観察されています。

人間との関わり

現在、ヒレナガゴンドウは国際的な保護の対象となっていますが、その個体数は定まっていません。特に北海やバルト海において、協定に基づいた保護が行われています。しかし、依然として捕鯨や生息環境の破壊による影響が懸念されています。このようにヒレナガゴンドウは、他の海洋生物とともに大切な生態系の一部を形成しており、その保護が急務となっています。

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