ヒロハノカワラサイコ

ヒロハノカワラサイコ (Potentilla niponica)

概要

ヒロハノカワラサイコはバラ科キジムシロ属に属する多年草で、広葉の独特な形状を持つのが特徴です。この植物は主に日本の北海道や本州の中部地方以北に自生しており、自然の草地や河川敷の明るい場所で見かけることができます。別名は「広葉の河原柴胡」で、これはその葉の形状から名付けられました。

特徴

植物の形状

ヒロハノカワラサイコは根が木質化しており地中深くまで伸び、茎は分枝して直立または斜めに成長します。茎の長さは約20-40cmで、全体に軟毛が密集しています。また、葉は奇数羽状複葉で互生する形態を持ち、小葉は7-15枚からなり、形状は倒披針形から狭長楕円形までさまざまです。上部の小葉は長さ2-3cm、幅8-15mmで、下部のものは次第に小さくなります。

葉の特徴

ヒロハノカワラサイコの葉の表面は濃緑色で、時折毛が生えていますが、無毛のものもあります。葉の裏面は白い綿毛に覆われ、また葉脈には絹のような伏毛が見られ、葉の縁は裏側に巻き込むような構造をしています。付属小葉片がないこともこの種の特徴です。茎葉の基部にはトウ葉があり、これは広楕円形から卵形で、鋸歯がわずかに見られますが、深く裂けることはありません。

花

花期は6月から8月にかけてで、散房状の花序を形成します。花は長期間にわたり次々と咲き続け、直径約1cmの鮮やかな黄色が特徴的です。萼片は5枚で卵状披針形、外側には綿毛が密生しています。副萼片も同様に5枚あり、花弁も5枚、広倒卵形をしていて、先は凹んでいます。雄蕊は20本あり、心皮は多数存在し、しっかりとした花柱があります。

果実

果実は卵形の痩果で、通常は多数つきます。色は褐色で毛はなく、縦じわがあり、縦のサイズは約1.3mmになります。

分布と生育環境

日本においては、主に日当たりの良い草地や砂地、そして河川敷などで育ちます。国外では、朝鮮半島、中国の東北部、ウスリー地域にも分布しています。

名前の由来

和名の「ヒロハノカワラサイコ」は、小葉の裂片がカワラサイコよりも広いことに由来しています。また、学名のniponicaは「日本の」という意味ですが、一部の文献ではP. nipponicaという名称が使われていたこともあります。

種類との比較

同じ属に属するカワラサイコ（P. chinensis）とは明確な違いがあります。カワラサイコは小葉が15-29枚と多く、裂片の深さも異なります。ヒロハノカワラサイコは北方に偏った分布を持ち、同じ生育環境にあっても異なる特性を示します。

保全状況

この種は環境省のレッドリストで絶滅危惧II類 (VU)に分類されています。これは主に生息地の減少などが影響しています。

参考文献

• - 佐竹義輔ら編 『日本の野生植物 草本II離弁花類』
• - 林弥栄監修 『山溪ハンディ図鑑1 野に咲く花』
• - 大橋広好ら編 『改訂新版 日本の野生植物 3』
• - 米倉浩司・梶田忠作成「BG Plants 和名−学名インデックス」

ヒロハノカワラサイコは、日本の自然の中でその独特な美しさを保ちながら生き続けています。

もう一度検索