ヒンドゥー教における釈迦

ヒンドゥー教における釈迦（ブッダ）の位置付け

ヒンドゥー教の伝統の中で、釈迦（シッダールタ・ゴータマ）は時折ヴィシュヌの化身と見なされます。プラーナ文献の一つである『バーガヴァタ・プラーナ』によれば、彼は25のアヴァターラの中で24番目の化身とされています。ここでは、最終的な化身であるカルキの到来が予告されていますが、釈迦の位置づけには多様な解釈があり、明確な結論は得られていないのが実情です。

多くのヒンドゥー教徒は彼を「ダシャーヴァターラ」、つまり神の十化身として認識し、特にその新しい化身、9番目の存在として重要視しています。これは大乗仏教の教義がヒンドゥー教へ影響を及ぼし、仏教がヒンドゥー教の一派として組み込まれた結果とも見られています。そのため、時には彼が誤った思想を広めることによって人々を混乱させる目的で登場したとも論じられることがあります。

仏教徒の文献においては、ダシャラタ・ジャータカが釈迦の前世としてラーマを描写していますが、ブッダの教えはしばしばヴェーダの権威を否定するものと見なされ、仏教は正統的なヒンドゥー教からは異端視されています。ヒンドゥー教徒の間での釈迦観は非常に多様で、特に、影響力のあるヴァイシュナヴァ派の詩人ジャヤデーヴァ・ゴースワーミーによる『ギータ・ゴーヴィンダ』の中では、釈迦がヴィシュヌの十化身の1つとして讃えられています。彼の主張は主に非暴力（アヒンサー）を強調するものであり、これが現代のヴァイシュナヴァ信者の間でも一般的な理念として伝承されています。

著名な現代のヒンドゥー教思想家、サルヴパッリー・ラーダークリシュナンやヴィヴェーカーナンダは、釈迦をすべての宗教の背後に存在する普遍的な真実の象徴と見ていました。このような視点は、ヒンドゥー教と仏教の関係を理解する上で重要な指摘です。

釈迦に対するヒンドゥー教徒の反応

立松和平がインドで経験したことが示すように、ヒンドゥー教の中で釈迦を至高の神として崇拝することは特に一般的ではありません。ヒンドゥー教徒の多くは、ラーマやクリシュナといった他のアヴァターラが崇拝されるのに対し、釈迦の崇拝は少ないとの声もあります。しかし、釈迦の教えや生涯、改革の試みは、ガンディーをはじめとする多くの現代のヒンドゥー教改革者に感銘を与えてきました。

仏教とヒンドゥー教は、1979年にアラーハーバードで行われたヴィシュヴァ・ヒンドゥー・パリシャッドで、ダライ・ラマ14世と共に敬意が表されました。このことからも、現代のヒンドゥー教における釈迦の影響力を誇示する象徴的な出来事と言えます。

ヒンドゥー教聖典における釈迦

釈迦は、さまざまなプラーナ文献において描かれており、その大半が仏教の開祖としての一面を示しています。ただし、すべての言及が同じ釈迦を指すわけではなく、「ブッダ」という言葉自体は知恵を持つ者を意味します。彼は悪霊を惑わす存在としての役割や、ヴェーダに基づく動物犠牲を非難する姿が描写されています。

『ハリヴァンシャ』『ヴィシュヌ・プラーナ』『バーガヴァタ・プラーナ』などの文献では、彼がヴィシュヌのアヴァターラの一つであり、通常9番目として位置付けられています。たとえば『バーガヴァタ・プラーナ』の一節には、デーヴァに力を戻させるためにブッダが誕生したとも記されています。

また、普遍的真理を探求する見地からも釈迦は重要な存在とされ、相互に矛盾する説明が存在するものの、彼の影響を受けたさまざまな解釈が生まれています。ブラフミニズムによる影響で、正統的なヒンドゥー教は仏教を取り込みながら、時に過小評価する姿勢も見られます。

釈迦についての情報は非常に多様ですが、このようにヒンドゥー教と仏教は相互作用しあい、数世紀にわたり影響を及ぼし合ってきました。彼の教えは、今もなお人々の心の中に生き続けています。

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