ヒートレース

ヒートレースとは

ヒートレース、またはヒート競走は、競馬において特定の馬が繰り返し競走を行い、その結果に基づいて優勝者を決定する方式です。競技の各回を「ヒート」と呼び、ある馬が2回または3回の勝利を収めるまで続けられます。この形式の競走は18世紀以前にイギリスで主流でしたが、19世紀になるとその人気が衰え、ジョッキークラブが禁止措置を取った結果、ほとんど行われなくなりました。現在、ヒートレースは東南アジアの一部地域で再び行われていることがあります。

歴史的背景

1775年の8月22日には、イギリス・バークシャー州のレディング競馬場でヒート競走が実施されています。この競技形式は、伝統的に王室賞（キングスプレート）などの重要なレースで用いられ、各地で競走規則が定められていました。特に1721年のニューマーケット競馬場で行われた「His Majesty's Plate」では、優勝賞金が100ギニー、6歳以上の牡馬による4マイルのヒート競走が行われました。エクイポートの負担重量は12ストーン（約76.2kg）であり、このレースのルールに従って競走が進行しました。

失格とデッドヒート

ヒート競走では、1着馬が決勝線に到達する際、他の馬が240ヤード（約219.5メートル）以上遅れていた場合、その馬は「失格」とされ、そのヒートに進むことができません。この規定は、当時の審判員が視認できる限界距離に基づいており、競馬業界では「distance pole」として知られています。この規則により、名馬エクリプスの「エクリプス1着、ほかはまだ見えない」という逸話が生まれました。

場合によっては、ヒート競走において僅差で着順が決まることがあり、この場合、該当のヒートは「デッドヒート」となり、勝負なしとみなされます。デッドヒートは、特に勝負を欲するファンにとっては残念な結果となる一方で、その意味合いは広がり、現在では激しい競り合いや白熱した争いをも示す用語として使用されており、日本語でも一般的に用いられています。

ヒート競走の興亡

ヒート競走は18世紀初頭には盛んで、長距離を走る馬同士の戦いが主流でしたが、時が経つにつれて競馬自体が進化し、長距離のヒート競走が次第に退屈で残酷だとされるようになりました。特に、18世紀の半ば頃からは、競走馬が全力疾走するのは後半の2マイルだけであることが一般化し、じりじりとした走行が見られるようになっていきました。

19世紀に近づくと、競馬主催者は経済効率を求めて1回で決まる短距離レースを好むようになり、1780年には3歳馬による短距離競走であるダービーが始まりました。ヒート競走は当時の観客にとって次第に魅力を失い、長距離競走は廃れていく運命にあります。アメリカでは一時的にヒート競走が盛んに行われていましたが、結局1878年に最後の4マイルのヒート競走が開催された以降、ヒートレースとしての姿はほとんど失われてしまいました。

ヒート競走の衰退は、馬の成長過程や経営上の効率の観点からも必然的な流れであり、以降は短距離で若い馬によるスピード重視の競走が主流となりました。このような変化を経て、現代の競馬はより短期間で楽しめるタイプの競走へと移行していったのです。

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