ビアサ897便墜落事故

ビアサ897便墜落事故の概要

1961年5月30日、ビアサ897便（ダグラス DC-8-53）がポルトガル沖の大西洋に墜落し、乗員乗客61名全員が死亡するという痛ましい事故が発生しました。この事故は、当時としては大型ジェット旅客機による3件目の死亡事故であり、1977年にTAPポルトガル航空425便墜落事故が発生するまで、ポルトガルで最悪の航空事故として記録されていました。

事故機

事故に使用されたダグラスDC-8-53（機体記号PH-DCL）は、製造番号45615として1961年4月に製造され、同年5月1日にKLMオランダ航空に納入された後、ビアサにリースされました。この機体はプラット・アンド・ホイットニーJT3D-1エンジンを搭載しており、事故発生時までに82回の離着陸と、合計209時間の飛行時間を記録していました。

乗員

897便には、以下の乗務員が搭乗していました。

機長: 41歳の男性で、1946年6月27日にKLMオランダ航空に入社。1961年3月16日からDC-8の機長を務めており、総飛行時間は12,886時間（うちDC-8は135時間、機長としては60時間）。
副操縦士: 44歳の男性で、1940年11月1日にKLMオランダ航空に入社。1961年4月8日からDC-8の副操縦士を務めており、総飛行時間は12,913時間（うちDC-8は55時間）。
航空士: 45歳の男性で、1937年11月1日にKLMオランダ航空に入社。総飛行時間は15,992時間。
航空機関士: 44歳の男性で、1938年3月14日にKLMオランダ航空に入社。1960年7月8日からDC-8の航空機関士を務めており、総飛行時間は14,656時間（うちDC-8は666時間）。
交代機長: 43歳の男性で、1947年8月1日にKLMオランダ航空に入社。1961年5月1日からDC-8の機長を務めており、総飛行時間は12,620時間（うちDC-8は80時間以上）。
交代航空機関士: 27歳の男性で、1955年10月1日にKLMオランダ航空に入社。1960年9月27日からDC-8の航空機関士を務めており、総飛行時間は2,865時間（うちDC-8は567時間）。

これらの乗務員に加え、客室乗務員8名が搭乗していました。

事故の経緯

897便は、ローマを出発し、マドリード、リスボン、サンタマリア島を経由してカラカスへ向かうチャーター便でした。0時6分にリスボンに到着し、乗務員の交代とKLMオランダ航空の整備員による点検の後、滑走路23から離陸許可を得ました。乗員14名、乗客47名（うち子供8名）を乗せた897便は、1時15分に小雨の中、サンタマリア島に向けて離陸しました。

1時18分に、雲底が3,700フィートであることが伝えられ、897便は周波数をリスボンの管制の周波数に変更しました。1時19分25秒、同機はリスボンの管制にカピラカのLS無線標識を通過し、FL60（6,000フィート）まで上昇すると報告しました。その後、早口で部分的にしか聞き取れない2文が同機から聞こえ、897便との交信が途絶えました。この最後の交信中に、897便は左にスパイラル・ダイブを始め、約20秒で左に90度まで傾斜し、その15秒後に海面に墜落しました。墜落前の15秒間に、過剰な右への姿勢修正が行われたとされています。最終的には、右に30度傾き、約25度のピッチ角で機首下げの姿勢で墜落したと推定されています。

事故原因

事故原因は、ポルトガル、オランダの両当局によっても特定されませんでした。ポルトガルの公式事故調査報告書では、「多くの当局や専門家の協力を得て、詳細な調査を行ったが、事故原因を特定することはできなかった」と結論づけられています。

一方、事故機が登録されていたオランダは、「直接的な証拠はないものの、事故調査委員会は、897便が航空計器、特に姿勢指示器の故障により、パイロットが計器を誤読した、あるいは計器に気を取られて通常の飛行経路から大きく逸脱した結果、墜落に至ったと考えている」とコメントしています。

関連項目

エア・インディア855便墜落事故
フラッシュ航空604便墜落事故
* パンアメリカン航空816便墜落事故

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