ビクトリー船

ビクトリー船：第二次世界大戦を支えた高速貨物船

ビクトリー船は、第二次世界大戦中にアメリカ合衆国で大量に建造された貨物船の一種です。ドイツのUボートによる攻撃で失われた船を代替することを目的として、戦時中に急ピッチで建造されました。

リバティ船からの進化

ビクトリー船は、それ以前に建造されていたリバティ船を基に、より新しい設計が採用されました。具体的には、以下の点が改良されています。

大型化: 全長、全幅、喫水が増加し、積載量が増えました。
高速化: より強力な蒸気タービンを搭載し、速力が4～6ノット向上しました。
外観の変更: 船首楼が高くなり、洗練された船殻設計になりました。

これらの改良により、ビクトリー船はUボートにとってより攻撃が難しくなり、高速輸送船団に加わることが可能となりました。

設計と構造

ビクトリー船の設計はVC2と呼ばれ、いくつかの型が存在します。主要な特徴は以下の通りです。

推進機関: 蒸気タービン、レンツ式レシプロ蒸気機関、またはディーゼルエンジンが搭載されました。
船体: リベットではなく溶接で組み立てられ、剛性が下げられました。
武装: 対潜水艦用、対水上艦艇用、対航空機用の火砲が装備されました (一部の型)。
船倉: 5つの船倉があり、当時の貨物船としては容積の比率が優れていました。

建造と運用

最初のビクトリー船「ユナイテッド・ビクトリー」は1944年1月に起工し、2月に完成しました。その後、続々と建造され、終戦までに合計531隻が就役しました。戦時中は、主に物資の輸送に使用され、大西洋の戦いにおいてはUボートによる被害を免れました。しかし、太平洋戦線では日本の神風特攻隊によって撃沈された船も存在します。

戦後は、マジック・カーペット作戦でアメリカ兵の帰還を支援するために、多くのビクトリー船が軍隊輸送船に改造されました。また、朝鮮戦争やベトナム戦争にも投入され、兵站を支えました。

その後、多くの船が民間に払い下げられ、貨物船や旅客船として使用されました。一部はアメリカ海軍の予備艦隊として保管され、後に解体または再利用されました。

多様な用途への転用

ビクトリー船は、戦後も様々な用途に転用されました。

海洋観測船: バウディッチ、ダットンなどに改造され、海洋調査に貢献しました。
衛星通信船: キングスポートに改造され、世界初の衛星通信船となりました。
ミサイル追跡艦: ロングビューなどに改造され、ミサイルの追跡に用いられました。
弾道ミサイル貨物船: 潜水母艦への補給任務に就きました。
技術調査艦: ベルモント、リバティーに改造され、情報収集活動を行いました。

現存するビクトリー船

現在、以下の3隻が博物館船として一般公開されています。

アメリカン・ビクトリー (フロリダ州タンパ)
レーン・ビクトリー (カリフォルニア州ロサンゼルス)
* レッド・オーク・ビクトリー (カリフォルニア州リッチモンド)

リンカーン・ビクトリーは、パナマ湾で半分沈んだ状態で放置されています。

ビクトリー船は、第二次世界大戦におけるアメリカの勝利に大きく貢献しただけでなく、戦後の様々な分野においても活躍しました。その多岐にわたる用途と、数多くの船が建造されたことは、特筆に値します。

もう一度検索