ビザンツ帝国領クレタ

ビザンツ帝国領クレタとは、ビザンツ帝国（東ローマ帝国）がクレタ島を支配していた時代の歴史を指します。クレタ島は、歴史の中で2つの期間にわたりビザンツ帝国の支配下にありました。

最初の期間: 後期ローマ帝国の拡大期（3世紀）から、820年代にアンダルシアから追放されたアラブ人による島の征服までの期間。
もう1つの期間: 961年のビザンツ帝国による再征服から、1205年のジェノヴァとヴェネツィアの軍勢による島の征服までの期間。

一般的に日本語では、この時代のクレタを指す特定の名称は存在しないため、本記事名は便宜的なものです。

歴史

ムスリムによる征服までの時代

ローマの支配下では、クレタは帝国のクレタ・キュレナイカ属州の一部でした。ディオクレティアヌス帝（在位：284年-305年）の時代に、クレタ島はキュレナイカから分離され、単独の属州となりました。コンスタンティヌス1世（大帝、在位：306年-337年）は、クレタ島をイリリクム道のモエシア主教区（後にマケドニア主教区）の下に置きました。この枠組みは古代末期まで続きました。4世紀の終わりまで、島のコイノンのような行政機関も存在していました。

4世紀から820年代のムスリムによる征服までの期間について言及する同時代の史料はほとんど残っていません。この時代、クレタ島はグレコ・ローマン世界の片隅にある静かな地域でした。隣接するロードス島やコス島とは異なり、クレタ島の主教たちは325年の第1ニカイア公会議にすら参加していません。457年のヴァンダル族による攻撃や、365年7月21日の地震、そして415年、448年、531年の地震によって多くの都市が破壊されましたが、クレタ島は平和と繁栄を維持していました。このことは、当時から島に残る数多くの大規模で高品質なモニュメントによって証明されています。6世紀に成立した『シュネクデモス』には、クレタ島はコンスラリスによって統治され、首都はゴルテュンに置かれ、22もの都市があったと記録されています。当時の人口は約25万人と推定され、主要都市中心部に住む少数のユダヤ人を除いて、ほとんどがキリスト教徒でした。

7世紀になると、クレタ島の平和は破られました。623年にはスラヴ人による最初の襲撃を受け、続いて654年と670年代にはイスラムの征服活動の中でアラブ人による襲撃を受けました。8世紀最初の10年間にも、特にカリフ、アル＝ワリード1世（在位：705年-715年）の時代に、アラブ人による襲撃が繰り返されました。その後、クレタ島はコンスタンティノープルから任命されたアルコン層の統治下で比較的平穏な時代を過ごしました。732年頃、皇帝レオン3世はクレタ島をローマ教皇の管轄からコンスタンティノープル総主教庁の管轄に移しました。767年にはクレタ島のストラテゴスの存在が確認されており、クレタ島のトゥルマルケス（地区長官）の印影も発見されています。これらの証拠から、8世紀（恐らくは730年代初頭）にクレタ島のテマが構成されたという説も存在します。しかし、多くの学者はこれらの証拠が不十分であり、当時のクレタ島にテマが存在したとは考えていません。

アラブ人の統治とビザンツ帝国の再征服

820年代後半までに、ビザンツ帝国の支配は終わりを迎え、クレタ島はアンダルス（イベリア半島）から来た追放者の一団によって征服されました。ビザンツ帝国は繰り返し彼らを追い払うための遠征を試み、まだ支配下に残されていたクレタ島の一部を統治するためのストラテゴスを任命したと考えられます。しかし、これらの遠征は失敗に終わりました。ビザンツ帝国は、サラセン人がクレタ島の北岸にカンダクスという拠点を建設するのを阻止できず、カンダクスはクレタ島のアラブ人（イスラム時代のクレタ）の首都となりました。アラブ人によるクレタ島の失陥は、ビザンツ帝国にとって大きな問題となりました。この島の陥落により、エーゲ海の海岸地帯が海賊に開放されたからです。

テオクティストスが指揮する842/843年のビザンツ帝国の大遠征は、同時代の史料である『Taktikon Uspensky』にクレタ島のストラテゴスの存在が記されていることから、ある程度の成功を収め、奪還したクレタ島の一部にテマを再建したと考えられます。しかし、テオクティストスはこの遠征作戦を放棄せざるを得なくなり、残された軍隊はすぐにサラセン人によって打ち破られました。911年と949年に行われたビザンツ帝国の再征服の試みも悲惨な失敗に終わりました。そして、960年から961年にかけて、将軍ニケフォロス・フォカスが大軍を率いてクレタ島に上陸し、カンダクスを攻略し、クレタ島をビザンツ帝国の支配下に戻しました。

ビザンツ帝国復帰後のクレタ

再征服後、クレタ島は正規のテマとして編成され、ストラテゴスによってカンダクスを拠点に統治されました。ヨハネス・クセノスや聖ニコンらの尽力により、島民のキリスト教への改宗が進められました。島の駐留軍として1,000名からなる連隊（taxiarchia）が編成され、taxiarchiaはトゥルマ（tourmai）としてさらに細分化されていました。

アレクシオス1世（在位：1081年-1118年）の時代には、クレタ島はドゥクス（公）またはカテパノによって統治されました。12世紀初頭までには、クレタ島は南部ギリシア（テマ・ヘラスおよびテマ・ペロポネソス）と共に、ビザンツ帝国の海軍司令官であるメガス・ドゥクス（大公）の支配下にありました。総督カリュケスによる1092/1093年の反乱を除き、クレタ島は比較的平穏な状態を維持し、第4回十字軍までビザンツ帝国の支配下にありました。第4回十字軍の際、アレクシオス4世はクレタ島をプロノイアとしてモンフェッラート侯ボニファッチョ1世に与えたと考えられます。しかし、ボニファッチョ1世はクレタ島を実効支配することができず、クレタ島に対する自身の権利をヴェネツィア共和国に売却しました。この取引の最中、クレタ島はヴェネツィアの商売敵であるジェノヴァ共和国によって制圧されましたが、ヴェネツィアは1212年までにクレタ島に対する支配を確立し、ヴェネツィアの植民地としてのクレタ島（カンディア王国）が確立されました。

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