ビジュアル80

株式会社ビジュアル80：泡沫のアニメーションスタジオ

1980年代から1990年代前半にかけて、日本のアニメ業界で活躍したアニメ制作会社、株式会社ビジュアル80（ビジュアルエイティ）。その歴史は、日本のアニメーション黄金期の光と影を映し出す、興味深いものです。

ビジュアル80は、フジテレビ出身の金子満氏によって設立されました。金子氏は、映像企画会社「MK COMPANY」の代表取締役を務めていた人物で、設立にあたり、日本アニメーションから渡辺忠美氏と加藤良雄氏というベテランプロデューサーを迎え入れました。この人材陣は、日本アニメーションの伝統とノウハウを受け継いでいたと言えるでしょう。

1980年、土田プロダクションとの共同制作で『おじゃまんが山田くん』からアニメーション制作に携わり、翌1981年には初の単独作品『名犬ジョリィ』を制作するなど、順調なスタートを切りました。さらに同年、金子氏が設立したJCGL（ジャパン・コンピュータ・グラフィックス・ラボ）との協業体制を確立し、『子鹿物語』を制作。その後は、『ポール・ポジション』以降、海外との合作作品を積極的に手がけるようになりました。

しかし、JCGLの経営悪化の影響を受け、ビジュアル80は金子氏の手を離れることになります。その後、経営体制は不明瞭なまま推移しますが、1989年からはオランダの製作会社テレスクリーン、および同社と業務提携をしていた日本の制作会社テレ・イメージとの共同制作が中心となります。

1990年7月には、「アニメーション事業者協会」が発足し、ビジュアル80も参加。同年に『楽しいムーミン一家』を制作、さらに劇場版の企画も進めていたことが分かっています。『楽しいムーミン一家』のエンドクレジットには「ビジュアル80名古屋」「ビジュアル80台北」と記載されており、名古屋市と台北市にスタジオを構えていたことが示唆されますが、これら以外の情報や具体的な作品実績、資料はほとんど残されておらず、その実態は謎に包まれています。

1992年には2本の劇場アニメ作品を同時公開するなど、活発な活動を見せていましたが、バブル経済崩壊の影響を大きく受け、1993年には倒産しました。現在も、かつて本社が入居していたビルにはビジュアル80の看板が残されているという、時代の流れを感じさせる光景が残されています。

ビジュアル80は短命に終わったものの、その歴史は、日本のアニメーション業界、特に1980～90年代のアニメ制作事情を知る上で重要な手がかりとなります。同社の作品は、日本のアニメーション史における貴重な記録として、今後とも研究・調査が必要とされるでしょう。

関連企業

アゼータ・ピクチャーズ：制作プロデューサーを務めた小林正典氏が1989年に設立。
ノーサイド：ビジュアル80出身の宮下勇治氏が1994年に設立。
シンエイ動画：ビジュアル80設立時の役員であった加藤良雄氏が、後に取締役・プロデューサーとして長く勤務した制作会社。
テレ・イメージ：ビジュアル80と共同制作を行った日本の制作会社。

ビジュアル80の短いながらも濃密な歴史は、日本のアニメーション業界の変遷、そして時代の波に翻弄される企業の盛衰を物語る、一つの事例として記憶されるべきでしょう。 彼らの作品群は、失われた時代のアニメーション文化を垣間見ることができる貴重な財産です。今後の研究によって、より詳細な実態が明らかになることを期待したいところです。

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