ビターズ

ビターズ：カクテルを彩る苦味の魔法

ビターズは、様々な材料を蒸留酒に漬け込んで作られる、独特の苦味と香りが特徴的なアルコール飲料です。その起源は薬用酒に遡りますが、現代ではカクテルの風味を豊かにする重要な役割を担っています。ここでは、ビターズの魅力に迫ります。

ビターズとは

ビターズは、蒸留酒に薬草、香草、スパイス、柑橘類の皮、ナッツなど、多種多様な材料を浸漬し、それらのエキスを抽出して製造されます。その製法はブランドによって異なり、秘伝とされている場合も少なくありません。そのため、詳しい原材料は不明な点が多く、資料によって記述が異なることもあります。

開発当初は、消化促進などの効能が期待され、薬用酒として用いられていました。しかし、現在では主にカクテルに苦味を加え、味や香りを引き立てる目的で使用されています。

イギリスで人気のビール「ビター」とは全く異なるものです。

代表的なビターズ

数多くのビターズが製造・販売されていますが、中でも特に有名なのは以下の2種類です。

アンゴスチュラ・ビターズ: 1824年にドイツ人医師のヨハン・ゴットリーブ・ベンヤミン・ジーゲルトによって考案されました。当初は強壮剤として開発され、現在もラベルに健康効果が謳われています。リンドウやハーブ、スパイスなどを原料としていますが、アンゴスチュラ（ミカン科の樹木）の樹皮は使用されていません。マンハッタンやピンク・ジンなど、多くのカクテルに欠かせない存在であり、バーには必ず置いてあるべき酒としても知られています。

ペイショーズ・ビターズ: 1834年に、薬剤師のアントワーヌ・アメデ・ペイショーによって発明されました。ペイショーが自身のビターズと砂糖を混ぜたコニャックを「コクティエ」という容器で提供したことが人気を博し、それが「カクテル」という名前の由来になったという説があります。また、「世界最古のカクテル」と呼ばれるサゼラックに不可欠な材料であり、カクテル文化の発展に大きく貢献しました。

その他のビターズ

上記以外にも、様々な種類のビターズが存在します。

オレンジ・ビターズ: オレンジの皮を原料としたビターズで、柑橘系の爽やかな香りが特徴です。
グレープフルーツ・ビターズ: グレープフルーツの果皮を原料としたビターズで、ほろ苦くすっきりとした風味が楽しめます。

ビターズの役割

ビターズは、カクテルに少量加えるだけで、味わいを大きく変化させることができます。苦味だけでなく、複雑な風味や奥行きを与え、カクテル全体のバランスを整える効果があります。また、ビターズの種類によって風味が異なるため、カクテルに個性を加えることも可能です。

ビターズは、カクテル作りにおいて、まさに魔法の雫と言えるでしょう。その奥深い世界を探求することで、カクテルをより一層楽しむことができるはずです。

参考資料

岩松誠志 監修, 『ベストカクテル』, 大泉書店, 2000.
日本バーテンダー協会 編著, 『ザ・カクテルブック』, 柴田書店, 1999.
* 吉田芳二郎 著, 『洋酒入門』, 保育社, 1968.

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