ビック (スペイン)

ビック（Vic）の歴史と文化

ビックは、スペイン・カタルーニャ州バルセロナ県オソナ郡に位置するムニシピ（基礎自治体）で、ビック平野の中心都市の一つです。バルセロナから69km、ジローナから60kmという地理的な位置から、カタルーニャ地方の要衝として重要な役割を果たしてきました。

古代から中世へ

古代ローマ時代、ビックは「アウサ（Ausa）」と呼ばれていました。この名前が刻まれたイベリア人の硬貨が発見されており、その歴史の古さを物語っています。西ゴート族の時代には「アウソナ（Ausona）」という名で知られていました。8世紀から9世紀にかけては、フランク人とイスラム勢力の境界に位置し、788年にはイスラム勢力によって破壊されました。その後、一部が再建され「ヴィクス・アウソネンシス（Vicus Ausonensis）」と呼ばれるようになり、これが現在のビックの名前の由来となりました。878年にギフレ多毛伯が実権を握ると、再植民が行われ、司教座が設置されました。その後、ビックはバルセロナ伯とビック司教の支配下に入りました。

中世の宗教的中心地として

1027年、ビック司教はトルジェス（現在のトゥールージュ）での会議で、最初の「神の休戦」を設立し、貴族間の私的な戦争を抑制しようと試みました。ビック司教座はタラゴナ大司教座に属し、カタルーニャ地方の重要な教区として機能していました。初代ビック司教シニディウスが516年に記録に登場し、その後も多くの司教が宗教会議に出席し、教区の発展に貢献しました。9世紀にはフランク王ルートヴィヒ1世の時代に再征服が始まり、ギフレ多毛伯によって修道院が建てられました。ビック司教アットンは学問を奨励し、後のローマ教皇シルウェステル2世を輩出しました。また、ウリバ司教はリポイ修道院とビック大聖堂を再建し、信仰の中心地としての役割を強化しました。

近世以降

18世紀には、フェリペ5世の中央集権政策に反発し、反乱の最初の焦点となりました。この対立はスペイン継承戦争を引き起こし、カタルーニャは自治を失うこととなりました。20世紀初頭には人口は約12,000人でしたが、1992年にはバルセロナオリンピックのローラーホッケー競技の開催地となりました。

文化と経済

ビックには、ビック大学やビック教区博物館など、多くの文化施設があります。また、革製品の博物館や市民市場、音楽祭なども開催され、文化的な活動が盛んです。経済面では、かつては織物業が盛んでしたが、現在は農業や建設業が中心です。特に、ソーセージやその他の豚肉加工品が有名で、特に細い燻製ソーセージであるフエは、ビックの特産品として知られています。

見どころ

サント・ペラ・アポストイ大聖堂は、ビック初の大聖堂であり、歴史的なミサが行われてきた場所です。1140年に再建されたサンタ・マリア教会は、1787年に新たな聖堂のために取り壊されましたが、その歴史は深く刻まれています。1803年に献堂された新たな大聖堂は、古典的な設計で、美しい白石のファサードが特徴です。内装はコリント式で、ゴシック様式の高祭壇が現存しています。

1635年に設立された神学校は、多くの著名人を輩出し、現在の神学校はかつてのイエズス会学院に位置しています。また、イエズス会の創設者であるイグナチオ・デ・ロヨラが、ビック司教座にあるマンレザの教会で精神的実践を記した場所としても知られています。

その他の情報

ビック大学は、1599年に設立された高等教育機関が前身で、哲学や芸術、神学などの学位を授与する権限を持っています。19世紀の哲学者ジャウマ・バルメスはビック出身で、その遺体はビック大聖堂の回廊に埋葬されています。

ビック出身の著名な聖職者には、聖アントニ・クラレ・イ・クララーや初代サンフランシスコ大司教ジュゼップ・サドック・アレマニなどがいます。また、バスケットボール選手のラウル・ロペスや自転車ロードレース選手のメルチョル・マウリもビック出身です。

ビックは、歴史と文化が豊かに交差する魅力的な都市です。古代から中世にかけての歴史的な背景、宗教的な中心地としての役割、そして豊かな文化と経済活動が、この街の魅力を形作っています。

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