ビデオテックス

ビデオテックスとは

ビデオテックスは、電話回線を通じて文字、画像、簡易動画を送受信するコンピュータネットワークシステムです。1980年代に、家庭や企業にある情報端末機器と、画像や文字データを持つ情報センターを接続し、センターに保存された情報を端末機器に表示する仕組みとして登場しました。当時、パーソナルコンピュータ（パソコン）はまだ高価だったため、ビデオテックスは比較的安価な情報端末として注目されました。略称はVTXで、VideoとTextを組み合わせた造語です。

ビデオテックスの利用

利用者は、テレビ受像機やビデオモニターに接続された専用のセットトップボックスから電話回線を使ってセンターに接続しました。双方向の対話形式で、チケット予約、オンラインショッピング、天気予報などの各種情報提供サービスを利用できました。現代のインターネットと基本的な利用形態は似ていますが、技術水準は遥かに低く、回線速度や端末性能も十分ではありませんでした。1990年代にWorld Wide Webが登場すると、ビデオテックスは急速にシェアを失い、その役割を終えました。

ビデオテックスの符号化方式

画像や文字情報を伝送するためには、情報をデジタルデータに符号化する必要があります。ビデオテックスでは、日本、欧州、北米でそれぞれ異なる符号化方式が検討されました。日本はCAPTAIN方式、欧州はCEPT方式、北米はNAPLPS方式を採用しました。

• - CAPTAIN方式: 日本で開発された方式で、画像はMH符号化方式、文字はJIS C 6226符号で送信されました。
• - CEPT方式: 欧州で主に利用された方式で、モザイク方式とも呼ばれ、図形片の組み合わせで図形を伝送しました。
• - NAPLPS方式: 北米で開発された方式で、線の場合、「LINE」「起点のドット位置」「終点のドット位置」のように、図形描画命令を伝送しました。

当時、国際電気通信連合（ITU-T）の前身であるCCITTで、ビデオテックスの国際標準方式が議論されましたが、一つに絞ることができず、結局三つの方式がすべて国際標準として採用されました。

各国のビデオテックスサービス

日本

日本では、日本電信電話公社（現NTT）がCAPTAIN方式によるキャプテンシステムをサービス開始しました。CAPTAINシステムは、専用端末を使用し、一般家庭を対象に電話回線を利用する方式でした。端末価格を抑えるため、画像の解像度は低く抑えられました。パソコンの普及に伴い、パソコンでキャプテンシステムを利用できるソフトウェアも開発されました。また、より高詳細なハイ・キャプテンも存在しました。

日本における広義なビデオテックスサービス

ビデオテックスサービスは、OSI参照モデルに従いプロトコル設計され、情報端末と情報センターを接続する通信網サービスを提供しました。利用者がセンター設備を用意するDF（ダイレクトインフォメーションセンタ）や、情報提供を行うためにコンテンツ格納スペースを貸すCAPF（キャプテン情報センター）といったサービスも存在しました。また、自センターを接続するIF（インフォメーションセンタ）という形態もあり、オーダーエントリサービス（受発注サービス）なども利用できました。

欧州

フランスでは、フランステレコムがミニテルという専用機を電話加入者に無償配布する政策を行い、普及を促進しました。

北米

カナダではテリドンというシステムが実用化され、これにAT&Tが機能を追加したものがNAPLPSとなりました。アメリカ合衆国では、一部のパソコン通信サービスでNAPLPSが利用されました。

ビデオテックスの歴史的意義

ビデオテックスは、現代のインターネットの先駆けとなる技術であり、情報通信技術の発展に大きな影響を与えました。技術的には先見の明がありましたが、当時の技術的な制約や社会的な背景から普及は限定的でした。しかし、この技術は、後のインターネットの発展に不可欠な基盤となったことは間違いありません。

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