ビデオフィードバック

ビデオフィードバックとは

ビデオフィードバックとは、ビデオカメラで撮影した映像をモニターに出力し、そのモニターを再びカメラで撮影することで、映像が循環する現象です。この際、入力（カメラでの撮影）と出力（モニターでの表示）の過程で必ず遅延が発生します。これは、映像がカメラからモニターへ、そして再びカメラへとループする過程で、フレーム単位の処理が行われるために生じます。ループ内の処理が増えるほど、遅延は大きくなる傾向があります。ビデオフィードバックは、「映像フィードバック」とも呼ばれることがあります。

歴史

ビデオフィードバックは、1956年にチャールズ・ギンスバーグが最初のビデオレコーダーを発明した直後に発見されました。当初は、技術者やテレビカメラマンの間では、カメラをモニターに向ける行為はノイズや不具合の原因として嫌悪されていました。自己増幅するビデオ信号は、カメラやモニターに悪影響を及ぼし、当時のモニターでは、静的な表示が焼き付きの原因にもなると考えられていたためです。

1960年代に入ると、ニューヨークのサイケデリックアートシーンで、ビデオフィードバックを芸術に応用する動きが見られるようになりました。ナム・ジュン・パイクは、1960年代半ばにニューヨークのグリニッチカフェでビデオフィードバックの映像を展示しました。彼が世界初のビデオアーティストとして挙げられることが多いですが、異論もあります。

1960年代後半から1970年代前半には、アメリカの東西海岸でメディアアーティストや実験者によってビデオフィードバックの作品が制作されました。スタイナ＆ウッディ・ヴァスルカやリチャード・ローウェンバーグらは「ザ・キッチン」を結成し、スキップ・スウィーニーらは「ビデオ・フリー・アメリカ」を設立し、それぞれビデオアートやビデオフィードバックの実験を行いました。

1970年には、デイビッド・ソーンが著書「Film, the Creative Eye」でビデオフィードバックについて言及しました。この本は、リチャード・レデラーが1970年代にセント・ポールズ・スクールで開講した「Creative Eye in Film」という講座で使用され、生徒たちはビデオフィードバックの制作と録画を定期的に行っていました。ソニーのVuMaxシリーズなどの録画用ビデオカメラや手回し式ビデオデッキの登場により、ビデオフィードバックの画像はより魅力的になり、一般の人々も映像実験を行えるようになりました。

1980年代から1990年代にかけて、ビデオ技術の進歩により、高品質で高精細なビデオ撮影が可能になりました。マイケル・C・アンダーセンは、ビデオフィードバックのプロセスの数式を初めて作成し、パラメータの変化によって映像が変化する様子を「メンデレーエフの正方形」として表現しました。

1990年代には、レイブシーンやサイケデリックアートの再興と共に、世界中のディスコの大型ビデオスクリーンにビデオフィードバックが映し出されました。Adobe Photoshopなどのソフトウェアには、ビデオフィードバックを模倣するフィルターも実装されています。

エンターテイメントにおける利用

多くのアーティストが、光学フィードバックを利用しています。例えば、クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」のミュージックビデオにもこの効果が用いられています。この効果は、合わせ鏡の中で自分を見ることに似ています。

また、イギリスのSFテレビドラマ「ドクター・フー」のオープニングタイトルにも、1963年から1973年までこの手法が採用されていました。当初はモノクロでしたが、1967年に解像度が向上し、1970年にはカラー化されました。1973年以降は、スリットスキャン写真に切り替えられました。

科学における応用

ビデオフィードバックは、光学フィードバックの一例です。科学分野における光学フィードバックの代表例は、レーザーの光共振器です。光共振器は、光を増幅する2枚の鏡で構成されています。1990年代後半には、不安定共振器レーザーの光ビームの断面がフラクタルパターンを示すことが明らかになりました。

ビデオフィードバックを理解することは、光学フィードバックの他の応用を理解する上でも役立ちます。不安定共振器レーザービームのフラクタル構造の本質を説明するために、ビデオフィードバックが利用されています。

ビデオフィードバックは、実験数学的なツールとしても有用です。複数のモニターでフラクタルパターンを作成したり、鏡を使って複数の画像を作成したりすることができます。SoftologyのVideo Feedbackのページでは、実際のビデオフィードバックとシミュレートされたビデオフィードバックに関する情報が提供されています。

光学フィードバックは、暗視装置の画面にも見られます。ここでは、蛍光体スクリーンで発生した光が光電面にフィードバックされ、画像の歪みを引き起こすことがあります。この現象は、蛍光体スクリーンの背面に反射板を蒸着したり、マイクロチャンネルプレートディテクターを搭載することで抑制されます。

哲学的な考察

ダグラス・ホフスタッターは、著書「わたしは不思議の環」で、ビデオフィードバックを不思議の環の例として取り上げ、実験について詳述しています。彼は、カメラのレンズの前に手をかざした際に画面が暗転した後、手を離すと元のパターンとは異なる模様が表示される現象に着目し、その変化や複雑さを考察しています。

その他の情報

ハウリング（音響フィードバック）
コンピュータグラフィックス
サイマティクス
ドロステ効果
フィードバック
干渉（物理学）
リアルタイム・コンピュータグラフィックス
再帰
自己参照
不思議の環
* ビデオ・アート

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