ビニロン

ビニロンとは

ビニロン（vinylon）は、ポリビニルアルコールをアセタール化して作られる合成[[繊維]]の総称で、別名ビナロンとも呼ばれます。1939年に京都帝国大学の桜田一郎氏と共同研究者の李升基氏、そして大日本紡績（現在のユニチカ）の川上博氏らによって初めて合成されました。これは、ナイロンに次いで世界で2番目に開発された合成[[繊維]]であり、日本初の合成[[繊維]]としても知られています。

開発の歴史

当初、ビニロンは「合成一号」や「カネビアン」と呼ばれていましたが、1948年に「ビニロン」と改称されました。工業化に向けた研究は、戦争の影響で一時中断されました。戦後も、連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）による人造繊維生産能力の制限により、大量生産はすぐに実現しませんでした。しかし、桜田氏、友成九十九氏、川上氏らの研究によって、1950年にGHQの制限が撤廃された後、倉敷レイヨン（現在のクラレ）と大日本紡績（現在のユニチカ）で工業生産が開始されました。


特筆すべきは、戦後に李升基氏を受け入れた北朝鮮では、ビニロンが同国の発明品とされており、「ビナロン（Vinalon）」という名称で呼ばれている点です。これは、同国主席の金日成氏が命名したとされています。北朝鮮では「主体科学」の先駆けとしてビナロン繊維産業が重視されており、軍用を含む被服類に広く使用されていると言われています。

ビニロンの特性

ビニロンは、他の合成[[繊維]]とは異なり、親水性と吸湿性を兼ね備えています。この特性は綿に似た風合いを生み出し、化学変化や熱に強く、強度、弾性率、耐候性、耐薬品性にも優れています。しかし、染色しにくい、しなやかさに欠けるといった短所も持ち合わせており、衣料用繊維としての使用は限定的です。そのため、ロープ、漁網、ゴムやプラスチックの補強繊維、セメント板の補強材など、産業用資材として広く利用されています。

また、フィルム状にした場合には、平面性や光学的透過性を活かして液晶表示装置の偏光板や、衣類、寝装品の外装フィルムなど、繊維以外の用途にも展開されています。さらに、湿った状態からアイロンなどの熱源で加熱加圧することで、糊付けしたような肌触りになるため、業務用シーツの素材としても活用されています。熱に強い性質から、難燃素材として作業服に使用されることもあります。焼却時にダイオキシンや塩化水素などの有害ガスが発生しないため、包装材としても重宝されています。

合成方法

ビニロンは、ポリビニルアルコールに酸触媒の存在下でホルムアルデヒドを反応させることで合成されます。この反応により、ポリビニルアルコールの1,3-ジオール部でホルマール化が起こり、環状の1,3-ジオキサン構造が導入されます。この過程で、約13.5%のヒドロキシ基が未反応のまま残ります。

用途

2009年の日本のビニロン繊維生産量は3万1千トンでしたが、2010年以降は「その他」にまとめられています。ビニロンは、学生服、レインコート、鞄、ロープ、漁網、繊維補強コンクリート、外科用縫合糸など、幅広い製品に使用されています。また、農業資材、水溶性樹脂素材、包装材、偏光板といった非繊維用途にも利用されています。自衛隊の幌、幕舎（テント）、作業服にもビニロンとの混紡製品が見られます。

このように、ビニロンは、その独特な性質を活かして、私たちの生活の様々な場面で活躍している素材です。

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