ビューティフル (ミュージカル)

ミュージカル『ビューティフル』：キャロル・キングの音楽と人生

『ビューティフル』（Beautiful: The Carole King Musical）は、20世紀を代表するシンガーソングライター、キャロル・キングの半生を描いたジュークボックス・ミュージカルです。彼女が作詞作曲した楽曲はもちろんのこと、最初の夫であるジェリー・ゴフィンとの共作、さらにはバリー・マン、シンシア・ワイル、フィル・スペクターといった同時代の音楽家たちの作品も使用され、1960年代の音楽シーンを鮮やかに蘇らせます。脚本はダグラス・マクグラスが担当し、キャロルの音楽と人生を深く掘り下げた作品となっています。

プロダクションの歴史

サンフランシスコでの初演

2013年10月、カリフォルニア州サンフランシスコのカレン・シアターで初演されました。マーク・ブルーニが演出、ジョシュ・プリンスが振付を担当し、キャロル役にはジェシー・ミューラー、ジェリー役にはジェイク・エプスタインが配役されました。

ブロードウェイでの成功

2014年1月にはブロードウェイのスティーブン・ソンドハイム・シアターに移行し、本格的な公演が開始されました。ミューラーとエプスタインが引き続き同じ役を演じ、キャロルの音楽と人間ドラマはニューヨークの観客を魅了しました。特に4月3日には、キャロル・キング自身が舞台に登場し、出演者たちと共に『君の友だち』を歌うという感動的な場面もありました。

ウェスト・エンド、全米ツアー、そして日本へ

2015年2月には、ロンドンのウェスト・エンドにあるオールドウイッチ・シアターで、ケイティ・ブレイベンがキャロル役を演じて開幕しました。同年9月には全米ツアーも開始され、アビー・ミューラーがキャロル役を演じました。さらに2017年には、日本でも帝国劇場で水樹奈々、平原綾香のダブルキャストで初演され、大きな話題を呼びました。その後も、全英ツアーやオーストラリアツアー、そして第2回全米ツアーも行われ、世界中で愛される作品となりました。

あらすじ

第1幕：音楽の才能が開花するまで

物語は1971年のカーネギー・ホールでのキャロルのコンサートから始まります。場面は1958年のブルックリンに移り、16歳のキャロルが音楽プロデューサーのドン・カーシュナーに売り込みに行く場面が描かれます。ブリル・ビルディングで彼女は才能を開花させ、ジェリー・ゴフィンと出会い、音楽パートナーとして、また恋人として固く結びつきます。2人は数々の名曲を生み出し、キャロルは妊娠、ジェリーとの結婚に至ります。

第2幕：試練と自立

結婚生活が落ち着いてきた頃、ジェリーの浮気や精神的な不安定さにより、キャロルは苦悩します。離婚を決意し、自分の音楽を追求するためにロサンゼルスへと旅立ちます。そこで彼女は、自分の歌を歌う喜びを見出し、新たなスタートを切ります。

音楽とキャスト

使用楽曲

このミュージカルでは、キャロル・キングの代表曲である『イット・マイト・アズ・ウェル・レイン・アンティル・セプテンバー』、『サヨナラ・ベイビー』、『ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー』、『ワン・ファイン・デイ』、『恋の雨音』、『君の友だち』、『ナチュラル・ウーマン』など、数々の名曲が使用されています。さらに『アップ・オン・ザ・ルーフ』や『ロコ・モーション』など、彼女と同時代の音楽家たちのヒット曲も織り交ぜられ、観客を魅了します。

主要キャスト

ブロードウェイオリジナルキャストでは、キャロル役にジェシー・ミューラー、ジェリー役にジェイク・エプスタインが起用されました。ウエスト・エンド公演では、ケイティ・ブレイベンがキャロル役を演じました。日本では、水樹奈々と平原綾香がキャロル役をダブルキャストで演じ、大きな話題となりました。

評価と受賞

『ニューヨーク・タイムズ』紙の劇評家ベン・ブラントリーは、この作品を「親しみやすい典型的伝記ミュージカル」と評し、キャロルの音楽と人生を称賛しました。一方で、『ニューヨーク・マガジン』誌の劇評家ジェシー・グリーンは、出演者の演技は称賛しつつも、劇的な展開に欠けるとして脚本を批判しました。しかし、多くの観客はこの作品に感動し、数々の賞を受賞しています。

映画化

2015年3月には、トム・ハンクスとゲイリー・ゴーツマンのプロダクション・カンパニーによって、このミュージカルの映画化が発表されました。今後の展開が期待されています。

『ビューティフル』は、キャロル・キングの音楽と人生を称えるだけでなく、女性の自立や友情、そして愛の普遍的なテーマを描いた感動的なミュージカルです。

もう一度検索