ビューマリス城

ビューマリス城：ウェールズの壮麗な中世要塞

ウェールズ北西部、アングルシー島に位置するビューマリス城は、中世ヨーロッパの軍事建築を代表する建造物の一つです。イングランド王エドワード1世によるウェールズ征服という激動の時代、1295年から建設が始まりましたが、完成することなく、その歴史は様々な出来事に彩られています。

エドワード1世とウェールズ征服

13世紀、イングランドとウェールズは長年にわたり覇権を争っていました。エドワード1世は、ウェールズを完全に征服するため、軍事拠点となる城の建設に着手しました。ビューマリス城はその重要な拠点の一つとして計画されました。当初は資金難により建設が遅れましたが、マドッグ・アプ・サウェリンの反乱を鎮圧した後、本格的な建設が始まりました。

壮大な二重城壁構造

ビューマリス城の最大の特徴はその同心円状の二重城壁です。外郭と内郭という二つの環状の防御壁が、水堀によって守られていました。この精巧な設計は、後世のヨーロッパの城郭建築に大きな影響を与えました。12基の塔と2つの門塔を持つ外郭、さらに6基の巨大な塔と2つの大きな門塔を持つ内郭は、優れた防御力と威圧感を与えていました。内郭には、王室の住居や様々な施設が計画されていましたが、完成には至っていません。

建設の難航と中断

建設は、マスター・ジェイムズという建築技師の指揮の下、多くの労働者によって進められました。しかし、スコットランドとの戦争による資金不足や、労働者への賃金問題など、様々な困難に見舞われました。建設はたびたび中断され、1330年頃には、巨額の費用を費やしたまま未完成の状態で終わりました。

オワイン・グリンドゥールの反乱とその後

15世紀初頭、オワイン・グリンドゥール率いるウェールズ人によるイングランド支配への反乱が起こり、ビューマリス城は一時反乱軍に占拠されました。その後イングランド軍が奪還しますが、城は次第に荒廃していきました。イングランド内戦（1642-1651年）では、チャールズ1世支持派によって掌握され、後に議会派に降伏しました。その後、廃城となり、19世紀初頭には私有地の一部となりました。

近代と世界遺産登録

20世紀に入ると、ビューマリス城は修復工事が行われ、その歴史的価値が再認識されました。1986年には、ユネスコの世界遺産「グウィネズのエドワード1世の城郭と市壁」の一部として登録されました。現在では、ウェールズ政府の機関であるカドゥによって管理され、多くの観光客が訪れる観光地となっています。

城の構造詳細

ビューマリス城は、外郭と内郭の二重構造を持ち、それぞれに複数の塔と門が配置されています。外郭は海に面した門を持ち、海からの補給路も確保されていました。内郭は、王室のための広間や施設を備える計画でしたが、未完成のままです。内郭の壁は非常に厚く、堅牢な構造を誇っています。石材には、地元産石灰岩、砂岩、結晶片岩などが使われています。

まとめ

ビューマリス城は、エドワード1世によるウェールズ征服の歴史、中世の軍事建築技術、そして国家権力の象徴を凝縮した建造物です。未完成のまま残された城は、その歴史と建築様式から、今も人々を魅了し続けています。完成に至らなかった事実は、歴史の複雑さと、人間の力だけではどうにもならない運命の歯車を感じさせます。しかし、その未完成さ故に、私たちはより深く、この城の歴史と物語に想いを馳せることができるのかもしれません。現在も修復・保存作業が続けられており、その歴史的価値を後世に伝える努力が続けられています。

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