ビヨンド (映画)

ビヨンド

概要

1981年4月29日にイタリアで公開された『ビヨンド』（原題：...E tu vivrai nel terrore! L'aldilà, 英題：The Beyond）は、イタリアンホラー界の巨匠、ルチオ・フルチ監督によるゾンビホラー映画です。本作は、監督が手掛けた『サンゲリア』、『地獄の門』に続く、いわゆる「地獄の門三部作」の三作目にあたります。日本では劇場公開されることなく、直接ビデオソフトとしてリリースされました。

この作品の最大の特色は、その徹底した残酷描写にあります。物語の冒頭から凄惨なリンチシーンが描かれるのをはじめ、顔面が硫酸で溶解するショッキングな光景、おびただしい数の巨大な蜘蛛が人間を捕食する戦慄、獰猛な犬が喉笛を噛みちぎる描写、そしてゾンビの頭部が文字通り吹き飛ぶ瞬間など、視覚的に強烈なインパクトを与える残酷シーンが連続します。これらの描写は、特殊メイクと特殊効果の巧みな使用によって、観る者に深い不快感と恐怖を植え付けます。

また、『地獄の門』で架空の町ダンウィッチを舞台にクトゥルフ神話への接近を見せたフルチ監督は、本作でもその傾向を深めています。物語の重要な鍵として、クトゥルフ神話に登場する禁断の魔術書『エイボンの書』が用いられており、作品全体の雰囲気やテーマ性は、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの宇宙的恐怖に対するオマージュとなっています。現世と異次元の境界が曖昧になり、理解を超えた存在や現象が人々を襲う展開は、まさにラヴクラフト的世界観の影響を色濃く反映しています。

あらすじ

物語は1927年のルイジアナ州から始まります。古いホテル「セブン・ドアーズ・ホテル」に滞在していた画家シュワイクは、ホテル内で発生する怪奇現象の原因と見なされ、恐慌をきたした村人たちによって捕らえられ、残忍なリンチの末に凄惨な最期を迎えます。

それから54年の時が流れ、叔父の遺産としてこのセブン・ドアーズ・ホテルを受け継いだライザは、閉鎖されていたホテルを再び開業させるべく改修工事に着手します。しかし、工事の開始と共に、ホテルでは次々と不可解な出来事が起こり始めます。塗装工が原因不明の転落事故で重傷を負ったのを皮切りに、ライザのもとにホテルの危険性を警告する謎めいた盲目の女性が現れます。さらに、ホテルの再開を勧めたコンサルタント、改修に当たっていた配管工とその妻、そしてホテルの小間使いまでもが、異様な状況下で次々と命を落としていきます。

これらの惨劇の裏には、驚くべき真実が隠されていました。実は、この世界には現世と地獄、あるいは異次元とを結ぶ7つの門が存在しており、そのうちの一つがセブン・ドアーズ・ホテルの地下深くに封印されていたのです。そして、かつてリンチを受けて処刑された画家シュワイクこそが、その門の番人だったのです。事態の異常さを悟ったライザは、地元の医師であるジョンに助けを求めます。二人でホテルの地下へと足を踏み入れたとき、彼らの目の前で地獄へと通じる門が崩壊を始めます。かろうじてホテルを脱出し、ジョンの勤める病院に逃げ込んだライザとジョンでしたが、恐怖はそこで終わりませんでした。崩壊した門の影響により、凄惨な姿で蘇った死者たちが病院中に現れ、生者である彼らに容赦なく襲い掛かるのでした。

スタッフ

監督: ルチオ・フルチ
製作: ファブリツィオ・デ・アンジェリス
脚本: ルチオ・フルチ、ダルダノ・サッケッティ、ジョルジオ・マウリッツォ
撮影: セルジオ・サルヴァーティ
音楽: ファビオ・フリッツィ
特殊メイク: ジャンネット・デ・ロッシ
特殊効果: ジェルマーノ・ナターリ
美術・衣裳: マッシモ・レンティーニ
編集: ヴィンチェンツォ・トマッシ

キャスト

ライザ: カトリオーナ・マッコール
Dr.ジョン・マッケーブ: デヴィッド・ウォーベック
シュワイク: アントワーヌ・セイント・ジョン
エミリー: サラ・ケラー
マーサ: ヴェロニカ・ラザール
ラリー: アンソニー・フリーズ
ジョー: ジョヴァンニ・デ・ナヴァ
Dr.ハリス: アル・クライヴァー
マーティン: ミシェル・ミラベラ

外部リンク

ビヨンド - allcinema
...E tu vivrai nel terrore! L'aldilà - IMDb（英語）

もう一度検索