ビリー・ライレージム

ビリー・ライレー・ジム：スネーク・ピットの伝説

ビリー・ライレー・ジム、通称「スネーク・ピット」は、かつてイギリス・ランカシャー州ウィガンに存在した、ランカシャー・レスリング（キャッチ・アズ・キャッチ・キャン）の伝説的な道場です。1950年代初頭にビリー・ライレーによって創設され、数々の名レスラーを輩出しました。

創設と背景

当時のウィガンは炭鉱の町として栄え、ランカシャー・レスリングが非常に盛んな地域でした。力自慢の炭鉱夫たちは、賞金のかかったストリートファイトにランカシャー・レスリングのスタイルで挑み、その中でもビリー・ライレーは、並み居る挑戦者たちを打ち破り、名を馳せていました。その賞金で家を母親にプレゼントし、残りで設立したのが、このビリー・ライレー・ジムでした。

ジムには、ビリーの息子のアーニー・ライレーをはじめ、ジャック・デンプシー、ジョン・ウォリー、ジョー・ロビンソン、そして彼の弟であるボブ・ロビンソン（ビリー・ジョイス）などが集まり、全盛期には30人ものレスラーたちが狭い道場で激しいトレーニングに励んでいました。

カール・ゴッチの入門

1951年頃には、後に名レスラーとなるカール・ゴッチが入門し、約3年間トレーニングを積みました。ゴッチは入門後最初のスパーリングで、師範代のビリー・ジョイスにわずか1分ほどでサブミッションを極められたことがきっかけで、入門を決意したと言われています。

スネーク・ピットの異名

ビリー・ライレー・ジムの出身者は、シュートレスリング（真剣勝負に対応できるレスリング）を習得していることで知られていました。当時のウィガンには炭鉱の穴が至る所にあり、一度倒されても蛇のようにしつこく攻撃を続けるファイトスタイルが特徴的だったことから、ビリー・ライレー・ジムは「スネーク・ピット（蛇の穴）」として恐れられるようになりました。

衰退と終焉、そしてその後

しかし、時代は変わり、トレーニングマシンを使ったジムが主流となるとともに、フリースタイルレスリングのルールが整備され、サブミッションが禁止されるようになりました。伝統的で危険なトレーニングを行うビリー・ライレー・ジムは、次第にレスラーたちから敬遠されるようになり、徐々に衰退していきました。

1977年に創設者のビリー・ライレーが死去すると、ジムはさらに衰退。1990年には火災によって焼失してしまいます。しかし、1989年にヨークシャー・テレビジョンがドキュメンタリー番組を放映したことがきっかけとなり、イギリスのスポーツ評議会がランカシャー・レスリングへの支援を表明しました。

ジム焼失後、ライレー・ジムの出身者であるロイ・ウッドが、アスプル・オリンピック・レスリング・クラブを設立し、後進の指導にあたっています。また、ビル・ロビンソンは1999年から2008年まで日本に居住し、宮戸優光と共にU.W.F.スネークピットジャパン（現：C.A.C.C.スネークピットジャパン）で指導しました。2007年には松並修がライレー・ジム京都を設立し、指導にあたっています。

鶴見五郎も1973年に欧州へ武者修行に赴いた際、短期間ライレー・ジムに入門し、ランカシャー・レスリングを学んでいます。

主な出身者・関係者

ビリー・ジョイス（一番弟子、師範代）
カール・ゴッチ
ビル・ロビンソン
バート・アズラティ
ブルーノ・アーリントン
ロイ・ウッド（後年の指導者）
ピーター・ソーンリー（初代ケンドー・ナガサキ）
レス・ソントン
スティーブ・ライト
ダイナマイト・キッド（トレーニング生）

レスラーの特徴

ビリー・ライレー・ジムは、ランカシャー・スタイルのレスリングを基本としているため、出身レスラーはスープレックスなどの投げ技を得意とします。また、シュート（真剣勝負）に対しても高い意識を持っており、それに応じる姿勢を持っていました。カール・ゴッチやビル・ロビンソンなどは、プロレスの試合がシュートマッチの様相を呈し、殺伐とした戦いになることもありました。彼らのファイトスタイルは、立ち技・寝技の両方に長け、蛇のようにしつこく絡みつくのが特徴です。

外部リンク

* C.A.C.C.スネークピットジャパン公式サイト

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