ビルダーズ・オールド・メジャメント

ビルダーズ・オールド・メジャメント(BOM)：イギリス船舶積載量計算の歴史

ビルダーズ・オールド・メジャメント（BOM、Builder's Old Measurement）は、1720年から1849年までイギリスで使用されていた、船舶の積載量を推定する計算方法です。全長と全幅のみを用いて算出するという簡便さが特徴でした。この方法は、船首材から船尾材までの長さである全長（フィート）と、船体の最大幅である全幅（フィート）から積載量をトンで算出しました。ここでいうトンは、載貨重量トン数として知られています。

BOMは、船舶の設計や税金徴収に用いられていましたが、蒸気船の普及とともに徐々に使われなくなっていきました。蒸気船は帆船と比べて全長と全幅の比率が大きく、また機関室が船内空間の大部分を占めていたため、BOMによる積載量の推定は現実と乖離するようになっていたのです。そのため、より正確な積載量算出の必要性から、新たな方法が求められるようになりました。

1849年には、容積を基準としたムアサム・システムが導入されました。これは、貨物積載量を立方フィートで測定し、「容積トン」（100立方フィート）という単位で表すものでした。重量ではなく容積を基準としたことで、船の種類や形状にかかわらず、より正確な積載量の算出が可能になりました。このムアサム・システムの導入によって、BOMは歴史の舞台から姿を消しました。

BOM以前の積載量計算：税金と積載量の関係

BOM以前にも、船舶の積載量を計算する方法は存在していました。その歴史は古く、1303年にはエドワード1世がイングランドで初めて商船への課税を行いました。この課税は船の積載量に基づいており、船舶の積載量を測る必要性、ひいてはそれを計算する手法の必要性を生み出したと言えるでしょう。その後、エドワード3世は輸入ワイン1タン（tun）あたり3シリングの税金を課しました。当時のタンは252ガロンの樽を意味し、およそ2240ポンドの重量に相当しました。

この税金徴収のために、積載量の計算法が考案されました。この初期の方法は、全長、全幅、そして竜骨から主甲板までの高さである深さを用いて計算されましたが、具体的な計算式は不明瞭です。分母は1立方フィートあたり1タンとなるよう設定されていたと推測されます。

1678年には、テムズ川の造船業者が新たな積載量推定法を考案しました。この方法は、満載排水量の3/5を載貨重量トン数と仮定するというものでした。船の排水量は、全長×全幅×喫水×ブロック係数で求められ、これを重量に換算するために、1トンの海水の体積である35立方フィートで割ることで載貨重量トン数が算出されました。この計算法では、喫水は全幅の半分と推測され、ブロック係数は平均値の0.62が用いられました。

この計算式は簡略化され、全長と全幅のみを用いたものへと発展していき、1694年にはイギリスの法律において、類似した計算式が新たな計算法として制定されました。この計算法は、1720年にBOMに取って代わるまで使用され、法的には1773年まで有効でした。

このように、BOMは長い歴史の中で進化してきた船舶積載量計算方法の集大成であり、その簡便性と時代背景を理解することで、より深く理解することができるでしょう。BOMの登場とその後の衰退は、船舶技術の発展と税制の変化を反映しており、歴史的な視点からも重要な意味を持っています。 BOM以降の計算法の発展についても、今後の研究が期待されます。

もう一度検索