ビル・トッテン

ビル・トッテン（Bill Totten, 1941年生まれ）は、アメリカ合衆国出身の実業家であり、辛口の評論家としても知られています。現在は株式会社アシストの代表取締役会長を務めています。彼は2006年9月に日本国籍を取得し、ペンネームとして賀茂川耕助の名も用いています。

経歴

1941年、アメリカ合衆国カリフォルニア州で誕生したトッテン氏は、カリフォルニア州立大学を卒業後、ロックウェル社やシステム・デベロップメント（SDC）でキャリアを積みました。SDC在職中に南カリフォルニア大学で経済学の博士号を取得しています。

1969年に来日し、1972年には日本においてパッケージソフトウェアの販売を手がける企業「アシスト」を設立しました。特に1989年には、一般消費者向け市販ソフトウェアとして、日本語ワードエディタや表計算ソフトの価格破壊を日本で初めて実現し、これらは大きな成功を収めました。

日米間の経済摩擦が激化していた1990年には、処女作となる『日本は悪くない』を出版し、米国政府の姿勢を強く批判しました。以降も日米関係に関する著作を意欲的に発表し続け、米国の政治、経済、社会に対する強い嫌悪感や、日本人が米国を無批判に称賛することへの懸念、そしてバブル崩壊前の日本の良き伝統を愛好する思いを表明してきました。このような彼の姿勢は米国政府の不興を買い、ブラックリストに載せられる事態に至ります。この経験から、米国との関係に見切りをつけ、日本に自身の将来を置くことを決意し、2006年に日本国籍を取得しました。

ビジネス以外の活動としては、家庭菜園をきっかけに、2006年にアシスト社内に「農芸研究プロジェクト」を発足させています。

2012年1月1日には、アシスト社の代表取締役会長に就任しました。これに伴い、アシスト社のウェブサイトで連載していたコラム「Our World」は、個人のブログへと活動の場を移しています。また、過去にはTBSテレビの「ブロードキャスター」でコメンテーターを務めるなど、テレビや講演活動でも積極的に自身の考えを発信しています。

主張

トッテン氏は、その独自の視点から様々な主張を展開しています。

特に日米関係においては、日米安保条約への反対や、反米を条件とした親日という強い思想的傾向が見られます。

また、彼は改憲論者としても広く認識されています。日本国憲法は外国によって作られたものであるとし、その改正こそが日本の真の独立に不可欠であると説いています。

北朝鮮による日本人拉致問題に関しては、日本の立場に対して批判的な見解を示すことで知られています。

JR福知山線脱線事故についても、「ブロードキャスター」で「国鉄を民営化しなければ起こらなかった」との見解を示しました。具体的な名前は挙げなかったものの、後に経済学者の加藤寛氏によって、事故の原因は国鉄の「悪しき体質」にあるとして、トッテン氏のコメントに対する反論がなされています。

税制についても独特の改革案を提唱しています。自著『課税による略奪が日本経済を殺した』の中では、所得税、法人税、相続税、消費税の全廃を訴える一方で、地価税、新規取得を除く株式売買税、外国為替課税、そして年間の消費額に応じた累進課税といった新たな税制の導入を提案しています。

著書

トッテン氏は、その評論活動を通じて数多くの著書を発表しています。代表的なものとしては、『日本は悪くない』をはじめ、『アメリカは日本を世界の孤児にする』、『アングロサクソンは人間を不幸にする』、『「脱アメリカ」が日本を復活させる』、『銀行は強盗、外資はハイエナ』、『日本は略奪国家アメリカを棄てよ』、『愛国者の流儀』などがあり、一貫して自身の対米批判や日本への思いが込められています。また、大前研一氏や田原総一朗氏との共著なども存在します。

実業家として成功を収める傍ら、社会評論家として独自の立場から日本の現状や国際関係について鋭い批評を展開し続ける人物です。

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