ビン・スカリー

ビン・スカリー（Vin Scully、1927年11月29日 - 2022年8月2日）は、アメリカ合衆国出身の伝説的なアナウンサーです。ニューヨーク市ブロンクス区で生まれ、その卓越した実況技術と温かい人柄で、多くのファンを魅了しました。

1950年、スカリーはブルックリン・ドジャース（1958年よりロサンゼルス・ドジャース）の専属実況アナウンサーとしてキャリアをスタートさせました。25歳という若さで1953年のワールドシリーズ実況を担当して以来、実に25回ものワールドシリーズ、そして12回のオールスターゲームでマイクを握りました。彼は、数々の歴史的な瞬間をその声で彩りました。

ドン・ラーセンの完全試合（1956年ワールドシリーズ）、サンディー・コーファックスの完全試合、ハンク・アーロンの通算715号本塁打、野茂英雄のノーヒットノーラン（1996年）など、野球史に残る偉業達成の瞬間を実況しています。

スカリーの実況スタイルは、過度な絶叫や決まり文句に頼らず、記録達成時にはあえて沈黙し、球場の歓声や拍手をリスナーに届けるというものでした。この独自のスタイルが、「20世紀で最も偉大なスポーツ・アナウンサー」「ドジャースの声」「ロサンゼルスの声」と称される所以です。

野球中継以外にも、NFL中継やPGAツアー・マスターズ中継も担当しました。特に、NFLの伝説的プレー「ザ・キャッチ」が生まれた1981年シーズンのNFCチャンピオンシップゲーム（サンフランシスコ・フォーティーナイナーズ対ダラス・カウボーイズ）の実況は、彼の代表的な仕事として知られています。

1982年には、アメリカ野球殿堂よりフォード・C・フリック賞が授与され、その功績が讃えられました。2016年には67年間の実況生活に幕を下ろすことを発表。引退に先立ち、ロサンゼルス市議会はドジャー・スタジアム近くの「エリシアン・パーク通り」を「ビン・スカリー通り」に改名する決議を行い、彼の功績を称えました。

2016年9月25日のコロラド・ロッキーズ対ドジャース戦が本拠地での最後の実況となり、同年10月2日のドジャース対サンフランシスコ・ジャイアンツ戦（AT&Tパーク）をもって、67年にわたる実況生活にピリオドを打ちました。

同年11月16日には、アメリカ合衆国における最高の栄誉の一つである大統領自由勲章を受章しました。

2022年8月2日、94歳で逝去。彼の声は、永遠に野球ファンの心に刻まれることでしょう。

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