ビー・バップ・ハイスクール (1985年の映画)

『ビー・バップ・ハイスクール』：不良映画の金字塔

1985年 12月14日、日本の映画界に衝撃が走った。きうちかずひろの人気コミックを実写映画化した『ビー・バップ・ハイスクール』の公開である。清水宏次朗と仲村トオルが演じる愛徳高校の不良学生、ヒロシとトオル。そして、マドンナ的存在の中山美穂演じる今日子。この3人を中心に繰り広げられる痛快な青春物語は、たちまち観客を魅了した。

ストーリー：愛徳高校と戸塚水産の抗争

物語は、トオルとヒロシが悪名高き戸塚水産高校の生徒と衝突するところから始まる。この事件をきっかけに、両校間の抗争が勃発。戸塚水産を牛耳る竜雄と虎雄兄弟（小沢仁志、木下秀樹）は、トオルとヒロシを執拗に追いつめる。そして、今日子が誘拐され、髪を乱暴に切られるという衝撃的な事件が発生する。窮地に陥ったトオルとヒロシは、仲間と共に戸塚水産に挑み、兄弟を倒して抗争に終止符を打つ。

原作との関わり：コミックの魅力を凝縮

映画は、原作コミックの複数のエピソードを基に構成されている。特に、1巻と2巻、そして4巻の内容が大きく反映されている。原作の持つ独特の世界観とテンポの良い展開を、映画でも巧みに再現することに成功している。

キャスト：豪華な顔ぶれ

主演の仲村トオルと清水宏次朗は、本作で鮮烈なデビューを飾った。中山美穂は当時絶大な人気を誇るアイドルであり、今日子役はまさに彼女のためにあるかのようなハマり役であった。その他、個性豊かな脇役たちが物語を盛り上げ、映画全体のクオリティを高めている。

映画化への道のり：東映とセントラル・アーツの共同製作

本作の映画化は、ウイングス・ジャパンの長谷川安弘社長の企画から始まった。東映に持ち込まれた企画は、配給部長やプロデューサーらの協議を経て承認。原作への深い理解と、東映の持つ不良映画の伝統を活かすという、両者のシナジーが本作の成功に繋がったと言えるだろう。

スタッフ：ベテランと新鋭の融合

監督は那須博之、脚本は那須真知子。アクション監督には、高瀬将嗣が参加。那須監督の演出は、徹底したリアリティと、時に荒唐無稽なユーモアを兼ね備え、これまでにない学園アクション映画を作り上げた。高瀬道場の技斗指導は、本作のアクションシーンのクオリティを決定的に高める要素となった。

製作費は1億1000万円。東映セントラルフィルム、ウイングス・ジャパン、セントラル・アーツの三社が出資した。主演俳優のオーディションは、5963名もの応募者が殺到。選考過程では、本物の不良たちが集結し、喧嘩が勃発するなど、まさに『ビー・バップ』の世界観が再現されたというエピソードも残っている。

清水宏次朗と仲村トオルは、このオーディションで選ばれた。清水は歌手として活動していたが、本作での演技は高く評価され、俳優としてのキャリアをスタートさせた。仲村は当時大学生であり、本作が芸能界デビュー作となった。

撮影：伝説に残るアクションシーン

撮影は、東映東京撮影所ではなく、日活撮影所で行われた。本作のアクションシーンは、リアルな打撃と、那須監督の独創的な演出が融合。走る列車からの川へのダイブ、プレハブ小屋のパワーショベル破壊など、現在では撮影不可能な危険なシーンも多く含まれている。俳優たちは、時には負傷しながらも、全身全霊で撮影に臨んだ。

技斗：リアルなケンカシーン

高瀬道場の技斗指導の下、俳優たちは顔以外の部分にプロテクターを装着し、フルコンタクトに近い状態で撮影が行われた。青あざや骨折など、怪我は日常茶飯事だったという。しかし、こうしたリアルなアクションが、本作の大きな魅力となっている。

鉄橋ダイブ：危険とスリル

特に有名なのが、鉄橋からのダイブシーン。このシーンは、スタントマンの技量と、那須監督の演出によって実現した。危険とスリルに満ちたシーンは、本作を伝説的な作品に押し上げた。

ラストシーン：忘れられない決戦

ラストシーンの撮影は、土砂降りの雨の中、ワンシーン・ワンカットで84手ものアクションが繰り広げられた。小沢仁志は、この撮影で負傷するも、最後まで演じきった。

作品の評価：大ヒットと高い評価

本作は、興行収入14億円を超える大ヒットを記録。地方での人気は特に高く、シリーズ化へと繋がった。多くの批評家から高い評価を得ており、後のヤンキー映画にも大きな影響を与えた作品と言える。

まとめ

『ビー・バップ・ハイスクール』は、青春、友情、抗争、そして愛情が詰まった、エンターテイメント性溢れる作品である。その独特の世界観と、リアルなアクション、そして個性豊かなキャラクターたちは、今なお多くのファンを魅了し続けている。

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