ピアノ協奏曲 (グリーグ)

ピアノ協奏曲イ短調 作品16について

エドヴァルド・グリーグのピアノ協奏曲イ短調 作品16は、彼が完成させた唯一のピアノ協奏曲であり、1868年、25歳の時にデンマーク滞在中に作曲されました。この作品は、グリーグの初期の傑作として広く知られ、今日でも非常に人気のあるピアノ協奏曲の一つです。

グリーグは当初、この協奏曲を1868年に完成させましたが、その後、出版社からの依頼で2番目のピアノ協奏曲の作曲を試みましたが、これは未完に終わっています。代わりに、彼はこのイ短調の協奏曲を何度も改訂しました。現在演奏されるのは、1906年から1907年頃にグリーグ自身が改訂し、1917年に出版された版です。初期版との間には、曲想に大きな違いはありませんが、楽器編成や独奏と管弦楽のパートに400か所以上の変更が加えられています。

この協奏曲は、数多くのピアノ協奏曲の中でも特に人気があり、グリーグの代表的な作品の一つとして広く愛されています。

曲の構成

この協奏曲は、以下の3つの楽章で構成されています。

第1楽章: Allegro molto moderato イ短調 4/4拍子 ソナタ形式
印象的なティンパニのクレッシェンドに導かれ、ピアノの流れるようなフレーズで始まります。これは、フィヨルドに流れ込む滝を表現したものとも言われています。第1主題は木管楽器によって提示され、第2主題は弦楽器によって「静かに歌うような」旋律が奏でられます。展開部では、第1主題が半音ずつ上昇する形で展開され、管楽器が主題を演奏する中で、ピアノは分散和音で彩りを加えます。カデンツァの後、弦楽器が第1主題の一部を奏で、コーダへと続きます。最後に、ピアノが冒頭のフレーズを再現して楽章を終えます。

第2楽章: Adagio 変ニ長調 3/8拍子 複合三部形式
弱音器をつけた弦楽器が、柔らかく充実した和音で旋律を奏でます。第2部でピアノが加わり、この旋律を受け継ぎながら発展させていきます。第3部では、管弦楽に支えられたピアノが主題を強奏し、次第に静かに消えていくように楽章を終えます。

第3楽章: Allegro moderato molto e marcato イ短調〜イ長調 2/4拍子 ロンドソナタ形式
第2楽章から切れ目なく続くこの楽章は、軽快でやや大規模なものです。中間部では、フルートが3連符を含む叙情的な第2主題を奏でます。終結部では、イ長調に転調し、第2主題を管弦楽とピアノで合奏し、壮大なクライマックスを迎えます。

編成

この協奏曲は、以下の楽器編成で演奏されます。

ピアノ（ソロ）
フルート 2
オーボエ 2
クラリネット 2
ファゴット 2
ホルン 4
トランペット 2
トロンボーン 3
ティンパニ（一対）
弦五部

演奏時間

演奏時間は約32分です。

備考

グリーグのピアノ協奏曲は、ロベルト・シューマンのピアノ協奏曲と比較されることがよくあります。これは、両曲が同じイ短調で書かれており、曲の始まりや作風が似ているためです。実際、グリーグはライプツィヒ音楽院に留学していた際に、クララ・シューマンによるシューマンのピアノ協奏曲を聴いており、大きな影響を受けています。

また、1870年にグリーグがリストにこの曲の手稿譜を見せたところ、リストは初見で演奏し、第3楽章のある部分を「これが本当の北欧だ！」と絶賛したというエピソードがあります。

作曲家の中澤久長は、自身の作品「降り注ぐ粒子 第一番」の中で、「グリーグの主題がシューマンの主題と音程関係が反行形になっている」という点を再解釈しています。

外部リンク

ピアノ協奏曲イ短調 作品16の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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