ピウス2世 (ローマ教皇)

ピウス2世（1405年 - 1464年）は、ルネサンス期にローマ教皇を務めた人物です。本名をアエネアス・シルウィウス・ピッコローミニといい、教皇になる以前は、人文主義者として、また詩人や歴史家として広く知られていました。彼はシエナで生まれ、シエナ大学で学んだ後、神聖ローマ帝国に仕え、皇帝の側近や外交官として活躍しました。

教皇エウゲニウス4世の時代には、バーゼル公会議に神聖ローマ帝国の宰相として参加し、教皇派と公会議首位派の対立を収束させるために尽力しました。その後、聖職者となり、カリストゥス3世の死後に教皇に選出され、ピウス2世を名乗ることになりました。

教皇としてのピウス2世は、1459年に枢機卿ヨハンネス・ベッサリオンの協力を得て、マントヴァ教会会議を招集しました。この会議で、彼はオスマン帝国に対する十字軍遠征を強く主張しました。しかし、神聖ローマ皇帝フリードリヒ3世をはじめ、多くの君主や国がこの呼びかけに消極的であり、彼の十字軍構想は実現しませんでした。1463年には再び十字軍を呼びかける教書を発表し、1464年には十字軍の出発地として選ばれたアンコーナに赴きましたが、その年の8月に亡くなり、遠征は中止されました。

ピウス2世は、故郷の町コルシニャーノ（後にピッコローミニと改名）を理想の都市にしようと考え、1459年にフィレンツェの建築家ベルナルド・ロッセリーノに設計を依頼しました。この計画によって、ピオ2世広場やピッコロミニ宮殿などが建設され、ルネサンス建築が立ち並ぶ美しい都市が誕生しました。現在では世界遺産に登録されているピエンツァ歴史地区として、その美しい景観は「トスカナの宝石」とも称されています。

また、当時の慣習であったネポティズム（縁故主義）に従い、甥のフランチェスコを枢機卿に任命しました。このフランチェスコは、後に教皇ピウス3世として選出されることになります。

ピウス2世は、人文主義者としての高い教養と、政治家としての手腕を併せ持った人物でした。その生涯は、ルネサンス期の社会や政治、文化を理解する上で重要な手がかりとなります。


関連作品として、塩野七生氏の著書『神の代理人』があります。この作品は、ピウス2世の生涯を詳細に描いており、彼の人物像や時代背景を深く理解するのに役立つでしょう。

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