ピウス6世 (ローマ教皇)

ピウス6世の生涯と教皇職の難局

ピウス6世（Pius VI、1717年12月25日 - 1799年8月29日）は、ローマ教皇として1775年から1799年までの間、重要な歴史的時期に在位していました。彼の本名はジョヴァンニ・アンジェロ・ブラスキ（Giovanni Angelo Braschi）で、教皇職に就くまでの足跡は波乱に満ちています。

初期の経歴

チェゼーナの貴族の家に生まれたブラスキは、法学を学び、教会でのキャリアをスタートさせました。ルッフォ枢機卿の秘書として活躍し、ナポリ王国との交渉において成功を収めたことで、教皇ベネディクトゥス14世の注意を引きました。その後秘書として仕え、サン・ピエトロ大聖堂の聖堂参事会員にも任命されました。彼は教皇クレメンス13世およびクレメンス14世に仕え、その優れた能力から1773年に枢機卿に任命されます。

教皇就任とフランス革命

クレメンス14世の死後、教皇選出コンクラーヴェは複雑な状況下で行われました。ヨーロッパ各国の権力均衡が影響し、最終的にイエズス会に寛容な態度を示すブラスキが教皇に選ばれました。彼の教皇名「ピウス6世」は、教会の価値観を守るための象徴でもありました。しかし、彼は就任当初から多くの困難に直面します。

ピウス6世の治世は、特にフランス革命の直撃を受けます。1789年の革命により、フランスの教会は迫害され、教会財産は国に没収されました。さらに、革命政府のもとで教皇を象徴する肖像画が焼かれ、教皇の権威は揺らぎました。この状況は、ピウス6世にとって衝撃的な現実でした。1791年にはアヴィニョンが没収され、教皇庁はさらなる困難に直面します。

軍事的な危機と捕囚

1793年にはフランス軍が教皇領に侵攻し、ピウス6世は教皇軍の敗北を見届けざるを得ませんでした。ナポレオン・ボナパルトが指揮を執り、教皇領は徐々に征服されていきました。1797年にはローマで暴乱が発生し、フランス軍の司令官が殺害されると、再度侵攻を受けました。教皇は増す圧力に直面し、退位を迫られるもののこれを拒否します。結果、彼は事実上の捕虜となり、イタリアからフランス各地を渡り歩く生活を余儀なくされました。

晩年と教皇の死

1799年8月29日、ピウス6世はフランスのヴァランスで亡くなりました。彼の死後、教皇の後継者を選出するコンクラーヴェが行われ、友人のルイジ・キアラモンティがピウス7世として新教皇に選ばれました。ピウス6世の治世は、経済政策の失敗からローマ教皇庁が財政難に直面する一方で、彼自身は芸術や公共事業を支援する姿勢を持っていました。ジャンベリーニや新たなバチカン美術館の創設はその足跡の一環です。

このように、ピウス6世は混乱の時代にあたり、教皇としての責務を果たしつつ多くの悲劇を経験しました。彼の治世は、教会と国家の緊張関係が最も顕著に現れた時期として、後に語り継がれることとなります。

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