ピエモンテのブドウ畑の景観:ランゲ＝ロエーロとモンフェッラート

ピエモンテのブドウ畑の景観：ランゲ＝ロエーロとモンフェッラート

ピエモンテ州は、イタリア北西部に位置し、ポー川とタナロ川が流れる肥沃な土地です。この地域は、バローロ、バルバレスコ、アスティ・スプマンテといった世界的に有名な高級イタリアワインの産地として知られています。2014年、この地域のブドウ畑の文化的景観がユネスコ世界遺産に登録され、イタリアの世界遺産としては50件目という節目を迎えました。

世界遺産としての構成

世界遺産に登録されたのは、ランゲ地方、ロエーロ地方、モンフェッラート地方に広がるブドウ畑と、関連する城や歴史的建造物です。具体的には、以下の6つの構成資産から成り立っています。

1. バローロのあるランガ地区
ランゲ地方の中心部に位置し、バローロという名の高級赤ワインを生み出す地域です。
霧が立ち込める丘陵地帯で、ネッビオーロというブドウ品種が栽培されています。
バローロ村には、ワイン博物館や州立エノテーカなどがあり、ワイン愛好家にとっては見逃せない場所です。

2. グリンツァーネ・カヴール城
イタリア統一運動に貢献したカヴール伯爵がかつて居城としていた城です。
19世紀には、ブドウ栽培とワイン製造技術の改良が推進された場所であり、その歴史的価値が評価されています。
城内には民俗学博物館や州立エノテーカがあり、カヴール伯爵の遺品や当時の様子を見ることができます。

3. バルバレスコの丘陵地
ランゲ地方に属し、バルバレスコという名の高級赤ワインが生産される地域です。
バローロと同様にネッビオーロ種から作られますが、より繊細でエレガントな味わいが特徴です。
丘陵地帯に広がるブドウ畑と、中世の建造物が織りなす美しい景観が魅力です。

4. ニッツァ・モンフェッラートとバルベーラ
バルベーラというブドウ品種の原産地であり、このブドウから作られるワインも有名です。
丘陵地に位置するニッツァ・モンフェッラートは、バルベーラの歴史的な市場町として、地域の伝統を伝えています。
中世の面影を残す街並みや州立エノテーカも見どころです。

5. カネッリとアスティ・スプマンテ
アスティ・スプマンテというスパークリングワインの主要な生産地です。
カルロ・ガンチャがアスティ・スプマンテを創り出した町であり、ガンチャ社の醸造所や地下大聖堂と呼ばれるワインセラーがあります。
アスティ・スプマンテの生産、流通、貯蔵における重要な場所として、評価されています。

6. インフェルノットのモンフェッラート
モンフェッラート地方特有の地下ワインセラーであるインフェルノットがある地域です。
岩盤をくりぬいて作られた地下セラーは、ワインの貯蔵に適しており、伝統的な建築技術を伝えています。
ヴィニャーレ・モンフェッラートとモンテマーニョが中心的な村落で、歴史的な街並みが残っています。

世界遺産登録への道のり

この物件は、一度は登録延期勧告を受けましたが、構成資産を見直し、再推薦した結果、登録が認められました。最初の推薦では、ワインそのものの説明に力点が置かれていましたが、再推薦では、各時代やブドウ品種の多様性を代表する資産であることの証明に重点が置かれました。

世界遺産の登録基準

この世界遺産は、以下の2つの登録基準を満たしています。

(iii) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
ピエモンテのブドウ畑の文化的景観は、長い歴史の中で継続的に改良されてきたブドウ栽培とワイン醸造の生きた証拠であると評価されました。
(v) ある文化（または複数の文化）を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
ランゲ＝ロエーロとモンフェッラートのブドウ畑は、人と自然環境との相互作用を示す顕著な例であり、その景観はヨーロッパのブドウ栽培地の模範であると評価されました。

まとめ

ピエモンテのブドウ畑の景観は、単なるワインの産地というだけでなく、その背後にある歴史、文化、そして人々の営みが凝縮された場所です。ワイン愛好家はもちろん、歴史や文化、美しい景観に興味のある方にも、ぜひ訪れていただきたい場所です。この地域を訪れることで、ワイン造りの奥深さや、人々の知恵と努力を感じることができるでしょう。

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