ピエロ (田原俊彦の曲)

田原俊彦「ピエロ」：ヒットの背景と新幹線中継秘話

1983年2月17日にリリースされた田原俊彦の13枚目のシングル「ピエロ」。前作「ラブ・シュプール」からわずか2か月という短いスパンで発売され、「NINJIN娘」から続く連続リリースの一環としても注目されました。

制作の舞台裏

作詞は来生えつこ、作曲は「悲しみ2(TOO)ヤング」「誘惑スレスレ」に続き、網倉一也が手掛けました。編曲は大谷和夫が担当し、「ラブ・シュプール」に続いての起用となりました。

興味深いエピソードとして、「ピエロ」の歌詞は当初「片思いキック」という別の曲のために書かれたものでした。そのため、「片思いキック」の歌詞でも「ピエロ」のメロディを歌うことが可能だったそうです。作詞・作曲・編曲の担当者が2曲とも同じであったことも、このエピソードを興味深いものにしています。

テレビ番組での披露：新幹線中継という挑戦

「ピエロ」のプロモーションで特筆すべきは、TBSの音楽番組『ザ・ベストテン』でのパフォーマンスです。1983年3月31日の放送で、番組史上初となる「新幹線車内からの歌唱（中継）」という前代未聞の試みが行われました。

当時、田原俊彦は倉敷市でコンサートを行っており、その日のうちに東京に戻る必要がありました。そこで、岡山発東京行きの新幹線最終便に乗車中の田原を捉え、新幹線が名古屋駅に停車するわずか2分間を利用して、歌を披露してもらうという計画が立てられました。

中継の実現に向けて、困難な課題が山積していました。車内の映像は、名古屋駅近くの名古屋ターミナルビルの屋上から望遠カメラで撮影。音声は超短波で飛ばし、同じく名古屋ターミナルビルの屋上に設置した移動式アンテナで受信するという方法が採用されました。

本番当日、新幹線は曲の途中で動き出してしまい、カメラは歌う田原の姿を捉え続けることができませんでした。しかし、音声だけは最後まで途切れることなく届けられ、なんとか中継は成功を収めました。

この大胆な企画は、当時の音楽番組の演出がいかに斬新であったかを物語るエピソードとして、今も語り継がれています。

記録と影響

「ピエロ」はオリコン、ザ・ベストテンともに第1位を獲得し、田原俊彦の代表曲の一つとなりました。新幹線中継という話題性も手伝い、幅広い層に支持されるヒット曲となりました。

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