ピエール＝ナルシス・ゲラン

ピエール＝ナルシス・ゲラン（Pierre-Narcisse, baron Guérin、1774年3月13日 - 1833年7月6日）は、フランス、パリ出身の画家であり、新古典主義を代表する一人です。

略歴

1785年、ゲランは王立絵画彫刻アカデミーの美術学校に入学し、画家としての第一歩を踏み出しました。初期には、ジャン＝ユーグ・タラヴァル、ニコラ・ギー・ブレネ、ジャン＝バティスト・ルニョーといった著名な画家に師事し、その指導の下で絵画の基礎を学びました。特に、ルニョーからは新古典主義の強い影響を受けました。

1797年、ゲランは才能ある学生に与えられるローマ賞を「ウティカのカトの死」で受賞しました。この受賞により、彼はローマへの留学の機会を得て、古典美術を深く研究することができました。1799年には、サロン・ド・パリに「マルクス・セクストゥスの帰還」を出展し、高い評価を受けました。この作品は、そのドラマチックな構図と感情表現で、当時の観衆を魅了しました。

ローマ留学から帰国後、ゲランは1810年頃からサロンへの出展を再開し、精力的に作品を発表しました。また、パリに自身のスタジオを構え、後進の育成にも力を注ぎました。1816年には、彫刻家のクロード・ドジューの後任として王立アカデミーの教授に就任し、教育者としての地位を確立しました。1822年からは、在ローマ・フランス・アカデミーの校長を務め、芸術家としての活動と並行して、後進の育成に尽力しました。

ゲランの作品は、新古典主義の特徴である、厳格な構図、均整のとれたフォルム、そして明快な色彩が特徴です。歴史的な題材や神話的な場面を、高い画力と洗練された構成で表現しました。

ゲランに学んだ人物

ゲランの指導を受けた画家は数多く、その中には以下のような著名な画家が含まれています。

ウジェーヌ・ドラクロワ：ロマン主義を代表する画家であり、ゲランから絵画の基礎を学びました。ゲランの教えは、ドラクロワのその後の芸術活動に大きな影響を与えたと言われています。
アリ・シェフェール：オランダ出身の画家で、ロマン主義的な作風で知られています。ゲランの工房で学び、その指導を受けました。
テオドール・ジェリコー：ロマン主義を代表する画家の一人であり、ゲランに師事しました。代表作には「メデューズ号の筏」などがあります。

これらの画家たちは、ゲランの指導の下で、それぞれの個性を開花させ、後世の美術史に大きな足跡を残しました。

作品

ゲランの作品は、ルーブル美術館など、世界各地の美術館に所蔵されています。代表作としては、以下のような作品が挙げられます。

「ウティカのカトの死」：ローマ賞を受賞した作品であり、新古典主義の典型的な作品です。
「マルクス・セクストゥスの帰還」：感情豊かな表現とドラマチックな構図が特徴的な作品です。
「アイネイアスとディド」：古代ローマの叙事詩「アエネイス」を題材とした作品で、神話的な場面を優美に描いています。

ゲランは、画家としてだけでなく、教育者としても多大な貢献をしました。彼の指導を受けた画家たちは、その後のフランス美術界を牽引し、彼の名は、フランス美術史に永遠に刻まれています。

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