ピクシレーション

ピクシレーションとは

ピクシレーション（pixilation）は、アニメーション制作技法の一つで、人間を被写体としてコマ撮りを行うことで、あたかも人間が人形のように動いているかのような錯覚を生み出す手法です。この技法は、ストップモーション・アニメーションの一種とみなすことができます。通常の映像制作では、現実の動きをそのまま連続撮影しますが、ピクシレーションでは、人間がポーズをとった状態を1コマずつ撮影し、それを連続して再生することで、実際には存在しない動きを映像上に作り出します。つまり、人間を「動く人形」のように扱い、アニメーションの原理を応用していると言えます。

歴史

ピクシレーションの歴史は古く、映画黎明期からその原型を見ることができます。セグンド・デ・チョーモンの『El hotel eléctrico』（1908年）やエミール・コールの『Jobard ne peut pas voir les femmes travailler』（1911年）などが初期の例として挙げられます。しかし、「ピクシレーション」という言葉自体は、カナダのアニメーター、グラント・マンロー（1923年 - 2017年）によって作られました。この技法は、その後も多くのクリエイターによって活用され、様々な作品が生み出されています。

アニメーションとの関係

ピクシレーションは、アニメーションの中でも特にストップモーション・アニメーションに分類されます。現実世界で自由に動ける人間を、あたかも人形のようにポーズを固定し、少しずつ変化させながら撮影していくことで、実写では表現できないユニークな動きを生み出します。この点は、静止した物体を少しずつ動かしながら撮影するストップモーション・アニメーションと共通しています。最終的な映像では、人間が動いているように見えますが、その動きは現実のものではなく、アニメーションとして作り上げられたものです。

作品例

ピクシレーションは、映画、テレビ番組、ミュージックビデオなど、様々なジャンルで活用されています。

映画

セグンド・デ・チョーモン『El hotel eléctrico』（1908年）
エミール・コール『Jobard ne peut pas voir les femmes travailler』（1911年）
ノーマン・マクラレン『隣人』（1952年）、『いたずら椅子』（1957年）、『ささいな二つの話』
チャック・メンヴィル＆レン・ジャンソン『Stop Look and Listen』（1967年）、『Blaze Glory』（1968年）、『Sergeant Swell of the Mounties』（1972年）
マイク・ジトロフ『マイク・ザ・ウィザード』（1989年）
ヤン・クーネン『Gisèle Kérosène』（1989年）
『鉄男』（1989年）
ヤン・シュヴァンクマイエル『フード』（1992年）、『悦楽共犯者』（1996年）の一部
ボレックスブラザーズ『親指トムの奇妙な冒険』（1993年）
PES『Fresh Guacamole』（2012年）、『Western Spaghetti』（2008年）

テレビ

『セサミストリート』（Milo Counting、Ordering a Pizza、George the Farmer）

ミュージックビデオ

ダグ・E・フレッシュ＆ザ・ゲット・フレッシュ・クルー『All The Way To Heaven』
ABC『Be Near Me』
オービタル『The Box』
フェニックス『Consolation Prizes』
オーケー・ゴー『End Love』
ザ・キュアー『ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド』
コールドプレイ『ウォーターフォール 〜一粒の涙は滝のごとく』、『ストロベリー・スウィング』
ザ・ホワイト・ストライプス『ザ・ハーデスト・ボタン・トゥ・ボタン』
カニエ・ウェスト『Heard 'Em Say』
カーズ『Hello Again』
オーレン・ラヴィー『Her Morning Elegance』
キナ・グラニス『In Your Arms』
カトリーナとザ・ウェーブズ『Is That It?』
アル・ヤンコビック『Lame Claim to Fame』
ジョージ・クリントン『Last Dance』
ダニエル・シルヴェストリ『Ma Che Discorsi]』
クラッシュ・テスト・ダミーズ『Now You See Her』
ザ・ユーズド『Paralyzed』
ニュー・シューズ『Point of No Return』
トーキング・ヘッズ『Road to Nowhere』
ファット・ボーイズ『Sex Machine』
ベス・オートン『Shopping Trolley』
ピーター・ガブリエル『スレッジハンマー』
レディオヘッド『ゼア・ゼア』
ザ・ブレイヴリー『Time Won't Let Me Go』
スリップノット『Vermilion』
レ・コロック
* ミシェル・ゴンドリー

ピクシレーションに似た技法

通常の動画をコマ落ちさせることで、ピクシレーションに似た効果を得ることもできますが、その品質はピクシレーションには劣ります。マイケル・ジャクソンの『Leave Me Alone』では、ビデオのフレーム速度を減速させ、オブジェクトに重ねることで、独特の効果を生み出しています。

ピクシレーションは、その独特な表現力から、多くのクリエイターに愛され続けているアニメーション技法です。

もう一度検索