ピクロトキシン

ピクロトキシンについて

ピクロトキシン（英:picrotoxin）は、セスキテルペンに分類される痙攣薬の一種です。この物質は1812年に、インドから東南アジアに自生するツヅラフジ科の樹木であるアナミルタ（Anamirta cocculus）から発見され、その名前はギリシャ語で「苦い毒」という意味に由来しています。また、ピクロトキシンはコックリン（cocculin）とも呼ばれています。

化学的背景

ピクロトキシンは、実際には2つの異なる化合物の混合物で構成されています。これらの化合物は、ピクロトキシニン（Picrotoxinin、C15H16O6）とピクロチン（Picrotin、C15H18O7）です。両者の分子構造は、コリアミルチンと呼ばれる別の化合物と似ており、コリアミルチンも同様に痙攣を引き起こす性質を持っています。

神経系への影響

ピクロトキシンは、神経系において特に重要な役割を果たします。具体的には、抑制的な神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸（GABA）の受容体の一つであるGABAA受容体を遮断する働きがあります。この遮断により、興奮性神経は抑制から解放され、逆にその信号が異常に増強されます。

この作用は、ピクロトキシンを大量に投与した場合に特に顕著に現れます。中毒症状としては、間代性痙攣が引き起こされることがあり、長時間にわたって作用させると脊髄にまで影響が及び、強直性痙攣を引き起こす可能性もあります。

臨床での使用

とはいえ、ピクロトキシンはその危険性ゆえに、実際の臨床においては使用されることはありません。また、過去の研究においても、そのリスクが高いことから医療現場での応用は避けられてきました。

関連項目

• - ストリキニーネ
• - ピクロトキシニン

参考文献

• - 伊藤勝昭ほか編集　『新獣医薬理学 第二版』 近代出版　2004年　ISBN 4874021018

ピクロトキシンは、その独特な特性により、神経科学や毒物学の研究において重要な対象となっていますが、安全性の観点から利用は制限されています。

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