ピューティア大祭

ギリシャを代表する祭典、ピューティア大祭

紀元前、ギリシャの中心地デルフォイで開催されたピューティア大祭は、アポローン神を讃える大規模な祭典でした。全ギリシャから人々が集まり、盛大な祭儀が執り行われました。当初は音楽と詩歌の競技が中心でしたが、後に体育競技も加わり、4年に一度開催される大規模な祭典へと発展していきました。オリュンピア祭典と並び称される、古代ギリシャを代表する4大祭典の一つとして知られています。

デルフォイとピュートーン

デルフォイは、古くはピュートーと呼ばれており、大地母神ガイアの代理、あるいは女神自身であるとされる大蛇ピュートーンが支配していました。ピュートーンは、ガイアまたはテミス女神の託宣所を管理していましたが、後にアポローン神がピュートーンを退け、聖地の支配権と託宣所を掌握します。デルフォイはアポローンの聖地となり、巫女が神託を伝える場所となりました。この神託は、ドードーナにおけるゼウスの神託と並ぶほどの権威を持ち、政治や戦争において重要な役割を果たしました。ピューティア大祭は、ピュートーンを弔う祭儀から始まったという説もあります。

音楽と詩歌から体育競技へ

紀元前6世紀には、すでにピューティア大祭はギリシャ全土で知られており、アポローン神を讃える音楽と詩歌の創作・発表競技が行われていました。伝説によると、アポローンがピュートーンを倒した時から始まったとされています。デルフォイには、スタディオンと呼ばれる競技場や劇場があり、これらの施設が祭典で使用されました。パルナッソス山もアポローンの聖地として知られています。

紀元前582年以降、ピューティア大祭は4年に一度の定期開催となりました。これは、隣接するクリッサが巡礼者から重税を課したことに端を発する戦争に勝利したことを受けて、体育競技が加えられたためです。これにより、ピューティア大祭はオリュンピア祭典と並ぶ全ギリシャ規模の祭典となり、オリンピックの開催年から2年後、または開催予定年の2年前に開催されるようになりました。

当初は音楽演奏競技が中心でしたが、次第にキタラの伴奏付きの歌唱、フルート演奏、演劇、詩や散文の朗読などが加わりました。紀元前582年以降は、オリュンピア祭典に倣って、陸上競技や戦車競走なども行われるようになりました。

月桂冠と聖なる平和

古代ギリシャの神聖競技会では、優勝者に葉冠が贈られました。四大競技祭のうち、月桂冠が授与されたのはピューティア大祭でした（オリュンピア祭典ではオリーブ冠）。

約3ヶ月続く祭典期間中は、「聖なるデルフォイの平和」が宣言され、参加者たちは安全にデルフォイを訪れ、帰国することが保証されました。祭典期間中は市民集会所や市場が開かれ、多くの訪問者による消費はデルフォイ市の大きな収入源となりました。また、デルフォイは芸術や技芸の交流の場としても重要な役割を果たしました。

競技の内容と記録

競技大会に関する記録は、多くが失われていますが、アリストテレスの記録などから、大祭の概略を知ることができます。6～8日間続いた競技は、「聖なる競技」から始まり、アポローン神がピュートーンを倒した様子を再現したものでした。その後、アポローン神殿で犠牲の献納式が行われ、一般競技が始まりました。音楽演奏や演劇は劇場で、スポーツ競技はスタディオンで、戦車競走はクリサの平野で行われました。競技の賞品は、月桂樹の小枝（月桂冠）でしたが、リンゴや椰子の木の小枝が贈られることもありました。勝利者の名誉は、故郷のポリスにおいても高く評価されました。

ピューティア大祭の終焉と近代の復活

紀元394年、ローマ皇帝テオドシウス1世によって、異教神殿破壊令が出され、ピューティア大祭は禁止されました。約1000年にわたる歴史を持つ大祭は、ここに終焉を迎えました。

しかし、1600年後、ベルリンで国際デルフォイ評議会が設立され、近代のデルフォイ競技が開始されました。1997年にグルジアで最初のジュニア大会が開催され、以後、世界各地で大会が開催されています。

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