ピューリタン (戯曲)

『ピューリタン』は、17世紀初頭のジャコビアン時代に書かれた作者不詳の喜劇です。初版は1607年に出版されましたが、作者については長らく議論が重ねられてきました。本の表紙に「W.S.」と記されていたことから、ウィリアム・シェイクスピアの作品であるという説もありましたが、現在ではトマス・ミドルトン作であるという見方が有力です。

作品の成立

『ピューリタン』の成立時期は1606年頃と推定されています。劇中に登場するいくつかの挿話が、ジョージ・ピールの作品『The Merry Conceited Jests of George Peele』から引用されていることがその根拠となっています。また、1607年に出版されるよりも前の1605年12月に書籍出版業組合に登録された記録があることや、劇中の記述から1606年という年が特定できることから、この時期に執筆されたと考えられています。

この劇が発表された背景には、1605年に発生した火薬陰謀事件が影響している可能性があります。劇中に登場する「Corporal Oath」という言葉は、当時カトリック教徒に課せられた「忠誠の誓い」と関連付けて解釈することも可能です。

『ピューリタン』は、1607年8月6日に書籍出版業組合に登録され、その年の暮れにジョージ・エルドによって四折版として出版されました。この時、劇はセント・ポール少年劇団によって上演されたとされ、作者は「W.S.」と記されていました。このイニシャルがシェイクスピアと同一視されたことが、後にシェイクスピア外典に数えられる要因となりました。

しかし、現代の研究者たちは「W.S.」をシェイクスピアとする説を否定しています。ウェントワース・スミスやウィリアム・スミスといった他の作家も候補に挙げられましたが、文体論的な分析から、トマス・ミドルトンが最も有力な作者であると考えられています。2007年には、オックスフォード大学出版のミドルトン選集にも収録されています。

あらすじ

物語の舞台は、夫を亡くしたばかりのピューリタンの未亡人、プラス夫人の家です。彼女の財産を狙い、貧乏学者のパイボード、追剥のキャプテン・アイドル、そして退役軍人たちが、予言者や魔術師に扮してプラス夫人を騙そうとします。計画は順調に進み、アイドルはプラス夫人と、パイボードは娘のフランシスとそれぞれ結婚することになりますが、物語は思わぬ展開を迎えます。

劇中に登場するパイボードというキャラクターは、ジョージ・ピールをモデルにしています。また、プラス夫人の召使いの名前である「セント・メアリー・オーヴァリー」と「セント・アントリングス」は、当時のピューリタンの活動拠点であった教会の名前です。劇の内容は、当時のピューリタンを風刺的に描いたものであり、その風刺の鋭さから、ピューリタンの伝道師ウィリアム・クラショーがこの劇について説教を行ったという記録も残っています。

『ピューリタン』は、作者が確定していないものの、そのユニークな登場人物や風刺的な内容から、当時の社会風俗を垣間見ることができる興味深い作品です。また、シェイクスピア外典として、その文学史的な価値も高く評価されています。

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