ピンク・フロイド・ライヴ・アット・ポンペイ

『ピンク・フロイド ライブ・アット・ポンペイ』は、ピンク・フロイドが1971年にイタリアのポンペイ遺跡で収録したコンサート映像を収めたドキュメンタリー映画です。監督はエイドリアン・メイベンが務めました。

概要

この作品は、観客のいないポンペイの円形劇場を舞台に、ピンク・フロイドがコンサートを行うというユニークな設定で撮影されました。監督のメイベンは、ウッドストックのような大規模なコンサートとは対照的な、静寂の中で音楽が響き渡る空間を創造しようとしました。

撮影は1971年10月4日から7日にかけて行われ、当時の最新アルバム『おせっかい』に収録されていた「エコーズ」が中心的な役割を果たしました。コンサートは「エコーズ、パート1」で始まり、「ユージン、斧に気をつけろ」、「神秘」、「吹けよ風、呼べよ嵐」、「マドモアゼル・ノブス」、「太陽讃歌」などが演奏され、「エコーズ、パート2」で締めくくられました。

「マドモアゼル・ノブス」の演奏には、メンバーが「『シーマス』っぽい演奏を入れたい」というアイデアから、メイベンが知り合いの愛犬ノブスに吠えてもらうという演出が加えられました。

「吹けよ風、呼べよ嵐」の演奏中には、ドラマーのニック・メイスンが激しくドラムを叩くあまり、スティックが手からすっぽ抜けてしまうというハプニングも起きました。

公開とその後

本作は1972年9月のエジンバラ・アート・フェスティバルで上映され、高い評価を受けましたが、同年11月25日にロンドンのレインボー・シアターで予定されていた上映は、劇場側の都合でキャンセルされ、混乱を招きました。一般公開は法的問題により遅れ、1974年夏にようやくEMIから公開されました。日本では劇場公開されず、1973年3月17日にNHK総合テレビの音楽番組『ヤング・ミュージック・ショー』で放映されました。

その後、LD、VHS、ベータマックスなどのビデオソフトが発売され、最初の邦題は『ピンク・フロイドの幻想』でした。LDとVHSには、1972年後半に撮影されたアルバム『狂気』の収録風景やメンバーのインタビューが挿入されました。DVD化の際には「ディレクターズ・カット」として大幅な編集が施されましたが、1972年のオリジナル版も収録されています。

2025年には、オリジナルの35mmフィルムからレストアされた4K映像と新ミックスを用いた映画が公開され、Blu-ray、DVD、CDも発売される予定です。

参考文献

ニコラス・シャフナー (1991). ピンク・フロイド「神秘」 (宝島COLLECTION). 今井幹晴（訳）. 宝島社. ISBN 978-4796607179
立川直樹 (1992). ピンク・フロイド One Of These Days. シンコー・ミュージック. ISBN 978-4401614103

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