ピースオブワールド

ピースオブワールド：生粋のサラブレッド、そして母として

2002年のJRA賞最優秀2歳牝馬に輝いたピースオブワールド。その生涯は、競走馬としての華々しい活躍のみならず、母としての子孫繁栄にも彩られた、まさにサラブレッドの物語と言えるでしょう。本稿では、彼女の一生を、デビュー前から繁殖牝馬引退まで詳細に辿ります。

輝けるデビューへの序章：血統と生い立ち

ピースオブワールドの母、ビバムールはアイルランドで生産された牝馬で、日本に輸入され中央競馬で競走馬として活躍した後、繁殖牝馬となりました。ビバムールはGI競走で5勝を挙げたタイキシャトルの近親でもあり、その血統背景は、ピースオブワールドの将来を予感させるものでした。

1999年、ビバムールは、当時流行していた種牡馬サンデーサイレンスと交配。そして2000年2月18日、北海道静内町の千代田牧場で、ピースオブワールドは誕生しました。サンデーサイレンス産駒は気性が激しい傾向がありましたが、ピースオブワールドは穏やかで扱いやすい性格でした。このことが、後の競走馬としての成功に大きく貢献したのかもしれません。

馬主は、千代田牧場代表の飯田正氏。飯田氏は、ピースオブワールドに大きな期待を寄せており、その名付けにも深い思いが込められています。当初は「ピースオブドリーム」という名が提案されましたが、登録申請が通らず、「ピースオブワールド」に改名されました。この名前には、アメリカ同時多発テロ事件が発生した時期にアメリカへ渡航していた飯田氏の思い、そして、ピースオブワールドの穏やかな性格、そして担当調教師である坂口正大氏のイメージが反映されているとされています。

競走馬時代：無敗の2歳女王

栗東トレーニングセンターの坂口厩舎に入厩したピースオブワールドは、福永祐一騎手を背にデビュー。2002年10月5日、京都競馬場の新馬戦を圧勝で飾ると、続くかえで賞も勝利し2連勝を達成しました。

そして、ファンタジーステークス（GIII）で重賞初挑戦。1番人気に応え、見事勝利を収め無敗記録を伸ばします。続く阪神ジュベナイルフィリーズ（GI）では、スタートで出遅れる不利を克服し、最後の直線で見事な末脚を繰り出し、優勝。4戦4勝、無敗でGIタイトルを獲得しました。

この勝利により、ピースオブワールドはJRA賞最優秀2歳牝馬に選出されました。261票中261票という満票での受賞は、その圧倒的な強さを物語っています。父サンデーサイレンス、母ビバムール、そして調教師・騎手といった最高のチームワークが、この輝かしい成功を支えたと言えるでしょう。

しかし、クラシックへの挑戦は、予期せぬ故障によって頓挫します。2003年2月、調教中に右橈側手根骨骨折。全治3ヶ月以上の重傷で、桜花賞への出場は叶いませんでした。オークスに復帰したものの13着と敗れ、秋華賞も4着に終わるなど、故障の影響は大きかったと言えるでしょう。

母としての人生：子孫への繁栄

競走馬を引退したピースオブワールドは、生まれ故郷の千代田牧場で繁殖牝馬として新たな人生を歩み始めます。初年度は流産しましたが、その後は6年連続で出産。12頭の仔を産み落とし、その多くが競走馬として活躍しました。なかでも、5番仔のモーニングコールや、海外で活躍した8番仔のプロミスオブピース、9番仔のウルフィーなどは、彼女の子孫としての成功を象徴する存在と言えるでしょう。

2021年、繁殖牝馬を引退。現在も千代田牧場で余生を過ごしています。ピースオブワールドは、競走馬として、そして母として、その血統と才能を未来へと繋ぎました。彼女の生涯は、まさにサラブレッドのドラマであり、これからも多くの競馬ファンに語り継がれていくことでしょう。

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