ピーター・トムス

ピーター・トムスは、オーストラリアに生まれ、後にイングランドで音楽家、作曲家として活躍した人物です。特に、ニュー・ウェイヴ期の人気バンド、ランドスケイプのキーボード奏者およびトロンボーン奏者としてその名を知られています。

彼はオーストラリアのメルボルンで生を受け、幼少期から青年期を当地で過ごしました。地元の音楽シーンでキャリアをスタートさせた後、シドニーへと移り、有名なミュージカル作品『ヘアー』に出演するなど、活動の場を広げていきます。

1973年、音楽の本場であるロンドンへ渡ったトムスは、演奏家としての道を本格的に歩み始めます。そして翌1974年、彼はランドスケイプというバンドに加入しました。当初は8人組だったバンドですが、間もなくリチャード・ジェームズ・バージェス（ボーカル、ドラムス）、クリストファー・ヒートン（キーボード）、アンディ・パスク（ベース）、トムス自身（トロンボーン、キーボード）、そしてジョン・ウォルターズ（キーボード、木管楽器）という5人編成に落ち着きます。

ランドスケイプは、デビューアルバムをリリースする前から、精力的なライブ活動やツアーを重ね、着実にファンベースを築いていきました。そして1979年、バンド名を冠した初のアルバム『ランドスケイプ』を発表。続く1981年にリリースされたセカンドアルバム『火星のティー・ルームより... (From the Tea-Rooms of Mars...to the Hell-Holes of Uranus)』からは、収録曲「Einstein A-Go-Go」が全英シングルチャートでトップ5入りを果たす大ヒットとなり、バンドの知名度を一気に高めます。さらに3枚目のアルバム『Manhattan Boogie-Woogie』は、ダンス・ミュージックの要素を取り入れた作品として高い評価を得ました。

しかし、『Manhattan Boogie-Woogie』の発表後、クリストファー・ヒートンとともにトムスはバンドを離れる決断をします。残された3人のメンバーはランドスケイプIIIと改名して活動を続けますが、それも1984年には解散となりました。

ランドスケイプ解散後、トムスは多才なセッションミュージシャンとして活動の場を移します。特に有名なのは、1985年に開催された歴史的なチャリティイベント、ライヴエイドへの参加です。彼はブームタウン・ラッツのホーンセクションの一員としてステージに立ちました。また、ソロアーティストや他のバンドのレコーディングやライブにも数多く参加し、カイリー・ミノーグ、ティナ・ターナー、ジュールス・ホランド、ロジャー・ウォーターズ、ピート・タウンゼンド、ミッジ・ユーロといった国際的に著名なアーティストたちと共演を果たしています。さらに、トーマス・ドルビーの1984年のアルバム『地平球 (The Flat Earth)』の制作にも参加しており、同年のトーマス・ドルビーのツアーにはトロンボーン奏者として帯同するなど、親密なコラボレーションも行いました。

2003年から2018年にかけての15年間、トムスは演奏活動から一時的に距離を置き、イギリスの音楽家ユニオン（Musicians' Union）の本部で勤務しました。これは彼の音楽業界に対する貢献の別の側面を示すものです。

ユニオンでの職務を終えた後、ピーター・トムスは再び演奏の第一線へと戻り、現在も精力的に音楽活動を続けています。キーボードやトロンボーンを操り、作曲も手がける彼のキャリアは、ランドスケイプでの成功から、多岐にわたるセッションワーク、そしてユニオンでの貢献に至るまで、非常に幅広く、イギリス音楽界における重要な一角を占めています。

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