ファイヴ・ライヴ・ヤードバーズ

ヤードバーズ 『ファイヴ・ライヴ・ヤードバーズ』

1964年に発表された『ファイヴ・ライヴ・ヤードバーズ』は、英国のロックバンド、ヤードバーズにとって初の公式アルバムであり、彼らのキャリアにおける重要な出発点となるライブレコーディング作品です。

アルバムの背景

ヤードバーズは、このアルバムの発表に先立つ1963年末から1964年初頭にかけて、米国のブルース界を代表するハーモニカ奏者、サニー・ボーイ・ウィリアムソンII世の英国ツアーにバックバンドとして参加していました。この時期のライブ音源は、後にヤードバーズが米国で広く認知された後の1966年に、『サニー・ボーイ・ウィリアムソン&ザ・ヤードバーズ』という形でリリースされています。

その後、ヤードバーズはEMI傘下のコロムビア・レコードと契約を結び、1964年3月に本作のためのライブ録音を実施しました。具体的な録音日については諸説あり、ロンドンの名門ライブハウスであるマーキー・クラブの公式サイトでは3月13日とされていますが、音楽評論家のクリス・ウェルチの著書では3月20日と記されています。

アルバムのリリースは、デビューシングル「アイ・ウィッシュ・ユー・ウッド」（ビリー・ボーイ・アーノルドのカバー）が6月に、セカンドシングル「グッド・モーニング・リトル・スクールガール」（サニー・ボーイ・ウィリアムソンI世のカバー）が10月にそれぞれ先行して発表された後の、同年12月でした。

本作の録音セッションでは、後にシングル化された「アイ・ウィッシュ・ユー・ウッド」も演奏されましたが、ベーシストのポール・サミュエル＝スミスが誤ってマスターテープから消去してしまったため、アルバムへの収録は見送られました。また、本作に収められた「グッド・モーニング・リトル・スクールガール」のバージョンは、シングルとして発表されたものとは異なり、エリック・クラプトンとポール・サミュエル＝スミスがリードボーカルを担当しています。

興味深いことに、本作は当時米国では正式にリリースされませんでした。代わりに、エリック・クラプトンがバンドを脱退した後の1965年11月に、米国独自の企画盤として発売されたアルバム『ハヴィング・ア・レイヴ・アップ』に、本作から「スモークスタック・ライトニング」、「リスペクタブル」、「アイム・ア・マン」、「ヒア・ティス」の4曲が収録される形となりました。

評価

本作に対する評価は、意見が分かれるところです。ヤードバーズ脱退後にクラプトンを自身のバンドに迎えた経験を持つジョン・メイオールは、本作におけるクラプトンのギタープレイについて、「何曲かで彼のソロを聴けるが、非常にワイルドだ。しかし、技巧的には取るに足りないほど平凡だ」と比較的批判的な見解を示しています。

一方、音楽評論家のBruce Ederは、音楽データベースサイトのオールミュージックにおいて、本作に5点満点中4.5点という高い評価を与えています。彼は「演奏面でも音質の面でも、1960年代中期における最高のライブレコードの一つである」と称賛しており、その歴史的・音楽的重要性を強調しています。

収録曲 (オリジナル盤)

本作には、以下の10曲が収録されています。ブルースやR&Bのカバーを中心に、当時の彼らのライブパフォーマンスを知ることができます。

トゥー・マッチ・モンキー・ビジネス (Chuck Berry)
アイ・ガット・ラヴ・イフ・ユー・ウォント・イット (Slim Harpo)
スモークスタック・ライトニング (Howlin' Wolf)
グッド・モーニング・リトル・スクールガール (Sonny Boy Williamson)
リスペクタブル (O'Kelly Isley, Ronald Isley, Rudolph Isley)
ファイヴ・ロング・イヤーズ (Eddie Boyd)
プリティ・ガール (Ellas McDaniel)
ルイーズ (John Lee Hooker)
アイム・ア・マン (Ellas McDaniel)
ヒア・ティス (Ellas McDaniel)

（※2000年以降のリマスターCDには、1963年後半から1964年初頭にかけてのデモ録音やライブ録音を含むボーナス・トラックが追加収録されています。）

参加ミュージシャン

本作に参加したメンバーは以下の通りです。この初期ラインナップには、後にロック史に名を刻むエリック・クラプトンが含まれています。

キース・レルフ: リードボーカル（#4を除く）、ハーモニカ、マラカス
エリック・クラプトン: リードボーカル（#4）、リードギター
クリス・ドレヤ: リズムギター
ポール・サミュエル＝スミス: リードボーカル（#4）、ベース
* ジム・マッカーティ: ドラムス

『ファイヴ・ライヴ・ヤードバーズ』は、ブルースをルーツとする彼らが、独自のハードな演奏スタイルを確立していく過程を捉えた貴重な記録であり、その後の英国ロックシーンに与えた影響を考える上でも見過ごせない作品と言えるでしょう。

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