ファエトン (小惑星)

ファエトン：太陽に最も接近する小惑星

ファエトン(3200 Phaethon)は、地球に接近する軌道を持つ小惑星で、アポロ型小惑星に分類されます。1983年、赤外線天文衛星IRASの観測データからイギリスとアメリカの研究者によって発見されました。当初は彗星ではないかと考えられていましたが、その後、ふたご座流星群の母天体であることが判明しました。

ファエトンの特筆すべき点は、太陽に非常に接近する軌道を持つことです。その近日点は水星の近日点よりも太陽に近い位置にあり、そのため、表面温度は摂氏750度を超えると推定されています。かつては太陽に最も接近する小惑星として知られていましたが、その後、さらに接近する小惑星も発見されています。

初期の観測では、ファエトンから彗星のようなコマやダストテイルは確認されていませんでしたが、炭素質に富む組成やふたご座流星群との関連性から、塵を放出し尽くした彗星の残骸であると考えられていました。しかし、21世紀に入ってからの観測で、ファエトンが一時的に増光する現象が確認され、彗星のような尾状の構造が発見されました。これは、ファエトンが現在でも活動を続けている可能性を示唆しています。

2007年と2017年には、アレシボ天文台によるレーダー観測が行われ、ファエトンの形状がほぼ球形で、直径は約6キロメートルであることが明らかになりました。また、2019年には、ファエトンの大きさをより正確に推定するために、日本とアメリカで恒星食の観測キャンペーンが実施されました。

ファエトンは潜在的に危険な[小惑星]として分類されており、その大きさを考慮すると、地球にとって大きな脅威となり得る天体です。将来の地球への接近が予測されており、2093年には地球から約291万キロメートルまで接近すると計算されています。

日本の[宇宙航空研究開発機構]を筆頭とした国際チームは、ファエトン探査計画DESTINY+を推進しています。この計画では、探査機をファエトンに接近させ、その表面や組成、活動状態などを詳細に観測することで、ファエトンの起源や進化、そして地球近傍小惑星の性質を解明することを目指しています。この探査計画は、地球防衛という観点からも重要な意味を持ちます。

ファエトンは、太陽系形成の初期段階に関する貴重な情報を提供してくれる可能性を秘めた天体であり、今後の探査によって、太陽系の歴史や進化に関する新たな知見が得られることが期待されています。また、地球近傍小惑星の性質や危険性についての理解を深め、将来的な地球防衛戦略の構築に役立つデータが得られることも期待されています。

概要:

名称: ファエトン (3200 Phaethon)
分類: 地球近傍小惑星 (アポロ型)
特徴: 太陽に非常に接近する軌道を持つ、ふたご座流星群の母天体、潜在的に危険な小惑星
大きさ: 直径約6キロメートル
探査計画: DESTINY+
地球接近: 2093年12月14日 (約291万キロメートル)

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