ファシズム大評議会

ファシズム大評議会：イタリア・ファシズム体制の心臓部

ファシズム大評議会（Gran Consiglio del Fascismo）は、ベニート・ムッソリーニ率いるイタリア王国ファシズム政権において、国家の最高意思決定機関としての役割を担った諮問機関です。1922年12月、ムッソリーニはファシスト党幹部を集め、ファシスト行動隊の義勇隊への転換と同時に大評議会の設置を決定しました。これは党と政府、さらには党と行動隊の調整と統制を目的としたものでした。

当初は党規約に明記されておらず、幹部との協議もありませんでしたが、1923年1月には第1回会議が開催されました。その後、1926年の党規約改定を経て、全国評議会や全国指導部の上に立つファシズムの最高機関と位置付けられました。さらに1928年には「大評議会に関する法律」が制定され、公式な国家機関としてその地位を確固たるものとしました。ただし、1929年以降の党規約では党機関としての言及はなくなりましたが、党の方針決定機関としての役割は変わりませんでした。

ムッソリーニ自身は1929年、大評議会を「体制の参謀本部」と表現しましたが、実際には決定権はなく、諮問機関に留まりました。大評議会の議題は多岐に渡り、党内問題、内政問題、外交問題（ロンドン軍縮会議、国際連盟脱退、アルバニア侵攻など）が討議されました。しかし、第二次エチオピア戦争や第二次世界大戦におけるポーランド侵攻後の宣戦布告などは、大評議会で討議されませんでした。また、国家改革に関する議題は詳細に討議される一方で、経済・産業分野の討議は比較的少なかったことが特徴です。

開催頻度は時代によって変動しました。1923年にはほぼ毎月開催されていましたが、1926年以降は年10回程度に減少し、1930年代後半にはさらに減少。1940年から1942年にかけては、一度も開催されませんでした。開催場所も当初はローマ市内のグランドホテルでしたが、その後は党本部、ヴェネツィア宮殿などに移転しました。

大評議会の構成員は1929年の法規定に基づいて決定されました。政府首長（首相兼国家元首）、閣僚経験者、党幹部、ファシズム運動への貢献者などから構成され、政府首長が指名したメンバーも加わりました。任期は3年でしたが、必要に応じて追加メンバーも選出されました。主要な構成員としては、ムッソリーニ（評議長）、終身評議員（ファシスト四天王など）、上下両院議長、主要閣僚、王立アカデミー会長、国防義勇軍総司令官、国家防衛特別裁判所長、党幹部などが挙げられます。

大評議会の歴史に終止符が打たれたのは1943年7月24日でした。3年ぶりに開催されたヴェネツィア宮殿での会議で、ディーノ・グランディがムッソリーニの首相解任動議（グランディ決議）を提出、賛成多数で可決されました。これにより、ムッソリーニは国王に辞表を提出、逮捕され、イタリア王国におけるファシズム体制は崩壊しました。ファシズム大評議会は、ムッソリーニ政権の全盛期から終焉まで、その中心的な役割を果たした機関であり、イタリア・ファシズム体制の理解には欠かせない存在です。

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