ファシスト四天王

ファシスト四天王：ムッソリーニ政権を支えた四人の男たち

ベニート・ムッソリーニ率いるイタリア国家ファシスト党が政権を獲得する過程において、ムッソリーニを支え、重要な役割を果たした4人の幹部を「ファシスト四天王」と呼びます。これは、古代ローマの行政官「四人官 (Quadrumvirs)」に由来する名称で、日本では「ムッソリーニ四天王」や「ファシスト四天王」と意訳されることが多いです。

彼らは1922年のローマ進軍を指揮し、1923年に設立されたファシズム大評議会（1928年に国家最高機関となる）の終身評議員に就任しました。それぞれが異なる経歴と個性を持っており、ムッソリーニ政権の樹立と維持に大きく貢献した一方、その後の歴史においても重要な役割を担うことになります。

四天王のメンバー

1. ミケーレ・ビアンキ (1882-1930): ムッソリーニの古くからの盟友であり、ファシスト党書記長を務めました。サンディカリストとしての思想的背景を持ち、1929年から1930年にかけて公共労働大臣を務めましたが、病のため1930年に死去しました。

2. エミーリオ・デ・ボーノ (1866-1944): ファシスト党の共同設立者の一人であり、第一次世界大戦で活躍した陸軍元帥です。ファシスト政権成立後は警察長官や国家義勇軍指導者に任命され、トリポリタニア総督、イタリア植民地相などを歴任しました。しかし、1943年にムッソリーニから離反し、ムッソリーニ首相解任の動議に賛成したため、イタリア社会共和国によって逮捕・処刑されました。

3. イタロ・バルボ (1896-1940): フェラーラ出身で、黒シャツ隊のリーダーとして活躍しました。四天王の中では最年少であり、ムッソリーニの後継者候補とも目されていました。1926年に空軍大臣に就任し、空軍の近代化と発展に貢献しました。しかし、ムッソリーニとの対立を深め、北アフリカ軍総司令官に転出させられ、1940年に事故死しました。ムッソリーニによる暗殺説も存在します。

4. チェーザレ・マリーア・デ・ヴェッキ (1884-1959): 弁護士出身で、ピエモンテ地方で黒シャツ隊を率いました。ローマ進軍当時、下院議員として活躍し、ムッソリーニ政権成立後は財務次官、ソマリランド総督、上院議員、バチカン大使、国民教育相、エーゲ海諸島総督などを歴任しました。1943年のムッソリーニ解任動議にも賛成し、アルゼンチンに亡命しました。イタリア社会共和国から死刑判決を受けましたが、1949年に帰国し、ネオファシズム政党の支援を行いました。

ローマ進軍とファシズム大評議会

ファシスト四天王は、1922年のローマ進軍において中心的な役割を果たしました。この進軍は、ムッソリーニが政権掌握を目的に行ったもので、四天王は軍事的および政治的な指導力を発揮しました。ローマ進軍の成功は、ムッソリーニのファシスト政権樹立を決定付ける重要な出来事となりました。

その後、設立されたファシズム大評議会は、当初は党の最高意思決定機関でしたが、1928年には国家の最高機関に昇格しました。四天王は、この大評議会の終身評議員となり、イタリアの政治に大きな影響力を持つことになります。

四天王のその後

ファシスト四天王は、ムッソリーニ政権下で権力を握り、イタリアの政治・社会に大きな影響を与えました。しかし、彼らの運命は様々でした。ビアンキは病死、バルボは事故死（暗殺説あり）、デ・ボーノとデ・ヴェッキはムッソリーニ政権崩壊後、逮捕・処刑または亡命を余儀なくされました。彼らの生涯は、ファシズム時代のイタリアの激動の歴史を象徴的に物語っています。

まとめ

ファシスト四天王は、ムッソリーニ政権の成立と維持に大きく貢献した人物たちでした。彼らの経歴や思想、そして最期は、20世紀イタリアの歴史を理解する上で欠かせない要素となっています。彼らの功績と責任、そして複雑な歴史的背景を理解することで、ファシズムというイデオロギーと、それが及ぼした影響をより深く理解できるでしょう。

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