ヴェネツィア宮殿

ヴェネツィア宮殿：ローマの歴史を物語る壮麗な宮殿

ヴェネツィア宮殿（Palazzo Venezia）は、イタリアの首都ローマの中心部に位置する壮大な宮殿です。カンピドリオの北、ヴェネツィア広場に面しており、広場の名前はこの宮殿に由来します。その歴史は15世紀に遡り、枢機卿の住居として建てられたことに始まります。

歴史

元々、この場所にはサン・マルコ教会に任命された枢機卿のための質素な中世の住居がありました。1451年、枢機卿ピエトロ・バルボ（後の教皇パウルス2世）が所有者となると、大規模な拡張と改築が行われました。建物は要塞化され、半地下が設けられるとともに、主階となるメザニンが作られました。また、バシリカと広場に面する門の間が拡張され、小規模な塔も建設されました。この大規模な改修によって、宮殿はルネサンス建築初期の特徴を示す建物の一つとなりました。1455年には、ピエトロ・バルボが記念メダルを鋳造し、その完成を誇ったほどです。

宮殿の建設には、近くのコロッセオから切り出された石材が使用されました。これは当時ローマで一般的だった慣習です。設計者は伝統的にレオン・バッティスタ・アルベルティであるとされています。彼は、ピエトロ・バルボのパトロンでした。ピエトロ・バルボは、教皇パウルス2世となった後もこの宮殿に住み続けました。

パウルス2世の死後、建築事業は中断されましたが、彼の甥であるアクイレイア総大司教マルコ・バルボによって引き継がれました。この時期には、緑豊かな中庭を囲む列柱のロッジアが計画されましたが、完成には至りませんでした。完全なルネサンス様式のデザインは、ジュリアーノ・ダ・マイアーノによるものです。

1564年、教皇ピウス4世はヴェネツィア共和国との友好関係を築くため、宮殿の一部を共和国に提供しました。これ以降、建物はヴェネツィアの大使館として、またサン・マルコ教会の名義枢機卿の住居として使われました。1797年、カンポ・フォルミオ条約によってヴェネツィア共和国が消滅すると、建物はオーストリアに引き継がれ、19世紀を通じてバチカンに派遣されたオーストリア大使館となりました。

1916年、第一次世界大戦中にイタリア王国が建物を接収し、戦後のサン＝ジェルマン条約によって正式にイタリアの所有となりました。その後、建物は改修を受け、ファシスト政権時代にはベニート・ムッソリーニが官邸として使用しました。特に、ヴェネツィア広場に面したバルコニーは、ムッソリーニが群衆に向けて演説を行う際に頻繁に利用されました。また、ファシズム大評議会の主要な会議場としても使用され、1943年7月24日には、ムッソリーニの首相退任を求めるグランディ決議が行われた場所でもあります。

現在、この建物はパラッツォ・ヴェネツィア国立博物館として公開されています。博物館には、キリスト教時代初期からルネサンス初期にかけての美術品（主に陶器、タペストリー、彫像）が展示されています。

周辺

1910年、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世記念堂の建設に伴い、ヴェネツィア広場が拡張されました。広場の反対側には、ヴェネツィア宮殿のレプリカが建設されました。この建物は現在、ゼネラリ保険のオフィスとして利用されています。また、広場の南側にあった「ヴェネツィア小宮殿」は解体され、広場の南西に再建されました。

2010年には、宮殿の下からムッソリーニの秘密防空壕（未完成）が発見され、注目を集めました。

ギャラリー

（ギャラリーの説明は省略）

ヴェネツィア宮殿は、その長い歴史の中で、枢機卿の住居、大使館、そして独裁者の官邸として様々な役割を果たしてきました。今日では国立博物館として、その歴史と芸術的な価値を後世に伝える役割を担っています。

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