ファテープル・シークリー

ファテープル・シークリー

ファテープル・シークリー（Fatehpur Sikri）は、インドのウッタル・プラデーシュ州に位置し、アーグラの約40キロ西方にあります。この都市は、ムガル帝国の第3代皇帝アクバルによって設立されました。アクバルは当時、跡継ぎに恵まれなかったため、イスラーム教の聖者サリーム・チシュティーを訪ね、世継ぎの予言を受けました。彼からの予言により、後に王子ジャハーンギールが誕生し、この出来事を記念して新たな都としてファテープル・シークリーを築くこととなりました。

しかし、ファテープル・シークリーは1571年から1585年までのわずか14年間しか使用されず、慢性的な水不足や厳しい気候条件のために新都ラホールへと遷都されることになり、やがて廃墟と化しました。この遺跡群は1986年にUNESCOの世界遺産に登録され、歴史的価値が認められています。

概要

ファテープル・シークリーの名は「勝利の都」を意味します。これは、アクバルがグジャラート地方で勝利を収めたことから名付けられました。この都市は台地の上に位置し、計画的にグリッド状に配置されており、主に宮廷地区とモスク地区に分かれています。ほとんどの建造物は赤砂岩を用いて建てられ、土着の建築文化とイスラーム建築が融合した独特の様相を呈しています。

主な構成物件

宮廷地区

宮廷地区にはいくつかの重要な建築物があります。

• - パーンチ・マハル：5層構造の建物で、壁がない設計から、遊戯や納涼、展望を目的とした施設と考えられています。
• - ディーワーネ・アーム（公謁殿）：市民と皇帝が交流するための広々とした建物で、周囲にはアーケードが配置されています。
• - ディーワーネ・ハース（内謁殿）：皇帝の私的な謁見の場で、特徴的なブリッジが設けられ、アクバルはここで賢者たちの議論を見守っていました。
• - ジョーダー・バーイー殿：アクバルの妃の名を冠した宮殿で、ペルシア様式の中庭建築の特徴を持ちつつ、インド建築の要素も取り入れています。

モスク地区

モスク地区の主要な構造物は以下の通りです。

• - ジャーマー・マスジド（金曜モスク）：デリーに後に建てられる金曜モスクとほぼ同等の面積を有するモスクです。
• - ブランド・ダルワーザー（壮麗門）：1573年に建設された凱旋門で、アクバルのグジャラート征服を記念しています。その高さは41メートルで、丘の上に大階段を持つ壮大な門です。
• - サリーム・チシュティー廟：聖者サリーム・チシュティーを祀った廟で、他の建物とは異なり白大理石が使用されています。
• - イスラーム・ハーン廟：赤砂岩で建設されたこの廟には、多くのスーフィーの墓があります。

登録基準

ファテープル・シークリーは、UNESCOの世界遺産の登録基準を満たしています。これには、ある文化圏における建築や技術、都市計画などの発展を示し、重要な文化的証拠を有すること、また人類の歴史的な時代を代表する建築様式や技術の優れた例として評価されています。

このようにファテープル・シークリーは、歴史的背景と建築の美しさを併せ持つ、インドの特異な遺産として多くの人々に感銘を与えています。

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