ファースト・ネーション

カナダの先住民：ファースト・ネーション

カナダには、古くからこの地に住む先住民がいます。その中で、イヌイットやメティ以外の先住民集団をファースト・ネーションと呼びます。1982年のカナダ憲法では、イヌイット、メティと共に、先住民としての権利が認められています。

ファースト・ネーションの現状

現在、カナダには630以上のファースト・ネーションのコミュニティが存在し、50以上の民族、50種類以上の固有言語が存在します。2021年の国勢調査によると、人口は約104万8405人で、カナダ全体の先住民人口の約58％を占めます。

ファースト・ネーションの人々の多くは、ブリティッシュコロンビア州、アルバータ州、サスカチュワン州、マニトバ州、そしてオンタリオ州に居住しています。特にマニトバ州とサスカチュワン州では、州人口の10％以上がファースト・ネーションの人々です。

呼称をめぐる問題

ファースト・ネーションの人々を指す呼称として、歴史的には「インディアン」という言葉が使われてきました。これは1876年に制定された「インディアン法」に由来し、現在でも法的に使用される場合があります。しかし、多くのファースト・ネーションの人々は、「インディアン」という呼称を植民地支配と人種差別の歴史を想起させる差別的な言葉と捉えています。そのため、1970年代から「ファースト・ネーション」という呼称が広く使われるようになり、現在ではこちらが一般的です。

「ネイティブ・アメリカン」という呼称は、アメリカ合衆国における先住民を指す言葉であり、カナダでは使用されません。「ネイティブ・カナディアン」も同様です。

直面する課題

ファースト・ネーションは、現在もなお、カナダにおける植民地支配と人種差別の影響を受けています。国連の調査によると、ファースト・ネーションの人々の平均寿命は、非先住民と比べて約17年短いという結果が出ています。これは、経済的、社会的、文化的な権利が十分に保障されていないことが原因の一つと考えられます。

主要なファースト・ネーション

カナダには数多くのファースト・ネーションが存在しますが、代表的な部族をいくつか挙げます。

ディネ族: 広大な地域に居住する、カナダ最大の先住民集団の一つ。
グウィッチン族: ユーコン準州に居住する先住民。
トリンギット族: ブリティッシュコロンビア州の沿岸部に居住する先住民。
ギックサン族、クワキウトル族、チルコーティン族、ニスガ族、ヌートカ族: ブリティッシュコロンビア州沿岸部に居住する、様々な文化を持つ先住民。
オジブワ族、アティカメク族、ミクマク族、アルゴンキン族、クリー族: カナダ東部と中部に住む、複数のグループからなる先住民集団。
ハイダ族、ブラックフット族、シュスワップ族: カナダ西部に居住する先住民。

まとめ

ファースト・ネーションは、カナダの歴史と文化において重要な役割を果たしてきた先住民集団です。しかし、現在もなお、多くの課題に直面しています。彼らの歴史、文化、そして現状を理解することは、多様なカナダ社会を築く上で不可欠です。

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