ファールス州

ファールス州：古代ペルシアの心臓部

イラン南西部に位置するファールス州は、面積12万2400平方キロメートル、人口約485万人（2016年現在）の州です。州都はシーラーズであり、古くからペルシア文明の中心地として栄えてきました。ファールスという名称は、古代ペルシア語のパールサに由来し、その後、中世ペルシア語のパールスを経て、現在のファールスとなりました。ギリシャ語ではペルシス、ラテン語ではペルシアと呼ばれ、現代のペルシア（イラン）の語源にもなっています。また、ファルシスタンという別名でも知られています。

歴史と文化：栄光の時代と多様な伝統

ファールス州の歴史は古く、アケメネス朝（ハカーマニシュ朝）のキュロス2世や、サーサーン朝のアルダシール1世といった偉大な王たちがこの地から帝国を築き上げました。アレクサンドロス大王もこの地を征服し、多くの都市を建設したことで知られています。

ビーシャープール、ペルセポリス、フィールーザーバードなどの古代遺跡は、ファールス州が長きに渡り、イランそして西アジアの歴史において重要な役割を果たしてきたことを物語っています。これらの遺跡は、古代ペルシアの壮大な建築技術と文化の繁栄を今に伝えています。

地理的にペルシア湾に近く、古くからテュルク系、セム系、アーリア系の様々な民族が流入し、イラン文化と融合しながら独自の文化を育んできました。カシュガーイー、ママッサーニー、ハムゼ、コフギールーイェなどの部族は、伝統的な文化や生活様式を現在も維持しており、イランの文化遺産として重要な役割を担っています。

地理と気候：多様な自然環境

ファールス州は、北西から南東に走るザーグロス山脈によって、北部と南部に大きく分けられます。両地域とも山岳地帯で、気候も多様です。北部と北西部は、夏は暑く冬は比較的穏やかな気候です。中央部は、穏やかな冬と暑く乾燥した夏を特徴とします。南部と南東部は、冬は穏やかですが、夏は非常に暑くなります。シーラーズの年間平均気温は16.8度、最低気温は4.7度、最高気温は29.2度です。

現代のファールス州：産業と観光

シーラーズ国際空港をはじめ、いくつかの空港が州内にあります。シーラーズは、テヘランから南部イランへの玄関口として機能しています。

農業は州の主要産業であり、穀物（大麦、小麦）、柑橘類、ナツメヤシ、ビート、綿花などが主要な農産品です。石油化学コンビナート、精油所、タイヤ工場、電機工場、製糖工場など、工業も盛んです。

伝統的な手工業も盛んで、シーラーズの延銀やマルケット、刺繍、アーバーデフのギーベ織、エステフバーンの陶器、絨毯など、多くの伝統工芸品が生産されています。フィールーザーバードのバラ水、ファサーの菓子、シーラーズのライムジュース、植物精油なども有名です。シーラーズは、イランのアイスクリームである「ファルーデ」でも有名です。

観光も重要な産業の一つであり、アールジャーン（ダシュテ・アールジャーン）はユネスコ生態保護区に指定されています。

教育機関

ファールス州には、シーラーズ大学、シーラーズ医科大学、シーラーズ工科大学などの高等教育機関があり、人材育成にも力を入れています。イスラーム自由大学も州内に複数のキャンパスを展開しています。

まとめ

ファールス州は、豊かな歴史、多様な文化、美しい自然、そして活気ある都市が調和した魅力的な地域です。古代遺跡から現代産業まで、多くの見どころがあり、イラン観光において重要な役割を担っています。

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