フアン・セバスティアン・エルカーノ

フアン・セバスティアン・エルカーノ（1476年 - 1526年 8月4日）は、スペイン王国のバスク地方ギプスコア出身の著名な船乗りであり探検家です。彼は、フェルディナンド・マゼランの航海を引き継いだことで歴史に名を残し、1522年に史上初めての世界一周を完成させたことで知られています。エルカーノはその姓がデル・カーノ（del Cano）やエルカーノ（Elkano）と異なる綴りでも知られ、彼の名は航海史において重要な意味を持ちます。

世界一周への道

エルカーノは、もともと商船の所有者でありましたが、スペインの法律に違反して自身の船を失い、カルロス1世に恩赦を求めました。彼はその際にマゼランの大遠征に参加することを許可され、1519年に航海に加わりました。この時点での乗員は265名でした。エルカーノは航海の途中でマゼランに対するクーデターに加わるも、鎮圧され、後に許されて船団の一員となります。特に彼はコンセプシオン号の船長に任命され、艦隊の一翼を担うことになります。

しかし、1521年4月27日にマゼランがフィリピンのマクタン島で現地住民との戦いで命を落とすと、艦隊は混乱に陥ります。エルカーノは、生き残った数名の船長と共に新たな指揮官となり、艦隊をまとめ上げていきました。最終的に、コンセプシオン号は損傷のためセブ島で放棄され、ビクトリア号とトリニダード号の2隻が残ることとなります。

航海の達成

1522年3月18日、エルカーノはインド洋南部で新しい島を発見しますが、その島に名を付けることはありませんでした。その後、彼は香辛料を持ち帰るため、ビクトリア号を指揮して帰路につきました。9月6日、ついにエルカーノはサンルーカル・デ・バラメーダに戻り、彼と僅か18名の仲間だけが、出航時の265名から生還したことになります。

エルカーノの功績は、カルロス1世から「地球を一周した最初の者」という称号を与えられることとなり、これにより彼は航海史上の偉業として記録されることとなります。生還した乗員たちは、再び富を得る機会を得ることになりました。この航海は、エルカーノやアントニオ・ピガフェッタなど18人の生き残りによる、確実な記録の残る最初の世界周航とされています。

最後の航海とその影響

その後、1525年にエルカーノはガルシア・ホフレ・デ・ロアイサの船団に参加し、再度香料諸島へ向かいましたが、残念ながらこの航海は運命を共にすることになります。彼は太平洋上で壊血病と栄養失調により死亡し、二度目の世界一周を果たすことは叶いませんでした。

生還者たちとその後

エルカーノと共に帰還した生存者たちは、その後も特別な地位を持つと考えられました。サンルーカル・デ・バラメーダの地には彼らの帰還を記したレリーフも存在します。また、彼の名は伝説として語り継がれ、歴史的な航海の一部として重要視されています。マゼラン艦隊全体では早期に失った者も多く、その後の航海の難しさを物語っています。特に一部の艦隊は、移動中に遭遇した嵐により目的地を断念せざるを得なくなり、その影響で捕虜となった乗員もいました。

異なる視点

この航海の歴史には異説もあります。著名な伝記作家ステファン・ツヴァイクは、マゼランの奴隷であったエンリケが「地球を一周した最初の人物」であると主張しています。彼の視点ではエンリケが元の土地に戻ってきたことから、「一周」といえるとしています。しかしエンリケの帰還には数々の困難が伴い、彼の最期は未だに不明であり、この議論は航海の歴史に新たな光を当てるものとなっています。

エルカーノの存在とその功績は、彼が引き継いだ航海を通じて、世界の理解と探検への道を開いたと言えるでしょう。

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