フィアット・スティーロ

フィアット・スティーロ：成功を収められなかったイタリアの小型車

フィアット・スティーロは、イタリアの自動車メーカー、フィアットが2001年から2010年にかけて製造・販売した3ドアおよび5ドアハッチバック、そして5ドアステーションワゴン（マルチワゴン）の小型ファミリーカーです。フォード・フォーカスやプジョー307といった強力なライバル車種が存在する市場に投入されました。

スティーロの技術と特徴

スティーロは、多用途なインテリア、信頼性の高いコモンレール式ディーゼルエンジン、そして当時としては先進的な装備を備えていました。特に、TRW製のコラムドライブ式電動パワーアシスト・ステアリング（EPS）は、駐車や低速走行時の操作性を向上させました。このEPSは、日産マイクラやルノー・メガーヌなど他の車種にも採用された技術です。

しかし、スティーロにはいくつかの欠点も指摘されています。その一つは車重の大きさです。これは、燃費の悪さや、半独立式リアトーションビームサスペンションによるハンドリングの不満につながりました。特に、先代モデルであるブラーボ/ブラーバが独立懸架式リアサスペンションを採用していたことから、この設計変更は後退だと批判する声もありました。また、1.2Lガソリンエンジンはパワー不足とされ、アバルトモデルに搭載されたセレスピードギアボックスも反応の遅さが問題視されました。

一方で、スティーロは高いレベルのグリップと制動性能を誇っていました。また、イギリス市場では「アクティブ」、「スポーティング」、「アバルト」など、多数のトリムレベルが用意され、オプションとしてレーダーアシストクルーズコントロールやプッシュボタンスタートシステム（Easy Go）も提供されました。

デザインと開発

スティーロのデザインは、マウロ・バッソ、アーロン・ホーキンス、トーマス・セルツレらによって手がけられました。3ドアハッチバックはスポーティなシルエット、5ドアハッチバックはより実用的なデザインとなりました。しかし、このデザインは賛否両論があり、「ドイツ車風で個性に欠ける」といった批判も寄せられました。

販売と生産

スティーロは、ミハエル・シューマッハを起用した大規模な広告キャンペーンが行われましたが、販売は低迷しました。フィアットは、スティーロの開発に9億ユーロもの巨額な投資を行い、年間20万台の販売を目標としていましたが、この目標には遠く及ばず、大きな損失を出しました。総生産台数は76.9万台にとどまり、そのうち10万2,662台がブラジルで生産されました。

モータースポーツ

スティーロは、イタリアとイギリスでシングルメイクレースシリーズにも参戦しました。アバルトによって開発されたグループN仕様車は、高い競争力を発揮しました。また、世界ラリー選手権にも出場した実績があります。

南米市場

南米市場、特にブラジルでは2003年から販売され、現地で組み立てられました。ブラジル向けには1.8Lエンジンやアバルトモデルも設定されましたが、2010年には生産終了となりました。

まとめ

フィアット・スティーロは、優れた技術と装備を備えた車でしたが、高い開発費用、販売不振、そしていくつかの欠点により、フィアットにとって大きな失敗作となりました。この車は、自動車メーカーが抱えるリスクと、開発費回収の難しさを改めて示す例となっています。今日でも、スティーロはフィアットにとって最も高価な車として記憶されています。

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