フィアット・セイチェント

セイチェント（Seicento）

セイチェントは、イタリアの自動車メーカーであるフィアットが1998年に発売した小型ハッチバック型の乗用車です。この車両は、元々チンクェチェントの後継モデルとして位置付けられ、Aセグメントに分類されることから、都市生活に適したコンパクトなデザインが特徴です。2005年以降はモデル名が600へと変わりましたが、その基本的なデザインや機能性は多くの要素を受け継いでいます。

歴史とモデルの変遷

セイチェントは、その名の通りイタリア語で「600」を意味し、第二次世界大戦後のイタリアにおけるモータリゼーションを象徴しています。初期のモデルは、シャーシやエンジン、その他の主要コンポーネントはチンクェチェントから受け継がれ、ポーランドにあるティヒ工場で生産されました。車名が600に変更されるのは、初代600の誕生から50周年を迎える2005年のことでした。

ボディスタイルは3ドアハッチバックとなっており、特にチンクェチェントと比較して曲線的で丸みを帯びたデザインが際立っています。エンジンは899 ccと1.1 Lの二種類が用意されており、トランスミッションには通常のマニュアル（MT）に加え、高グレードモデルではセミオートマチックシステムである「シティマチック」が選ばれることもありました。また、「スポルティング」と呼ばれるスポーツモデルや、電気自動車バージョンの「エレットラ」もラインナップされています。

2001年には特別仕様車「ブラシ」が発売されており、これはボディ色以外のカラーで仕上げられた前後バンパーやミラーなどが特徴的です。2002年に入ると、エレットラは生産を終了し、2004年にはスポルティングも同様に生産を終えました。そして、残ったモデルは600という名称の下で生産が続けられましたが、2010年に12年に及ぶ生産が完了しました。セイチェントに後継車は登場しなかったものの、2代目パンダや3代目500が市場のニーズに応える形で登場しました。また、日本市場向けには正規に輸入されることはありませんでした。

モータースポーツでの活躍

フィアットは、セイチェントをベースとしたワンメイクラリー専用モデル「セイチェント・スポルティング・トロフェオ」を1998年から展開しました。このシリーズは、前身のチンクェチェント・トロフェオと同様に、アバルトが開発したキットパーツを組み込む形で販売されました。基本的にベースモデルからエンジンを変更せずに、ロールケージや消火器、フルバケットシートといった安全装備を追加したものです。さらに、アバルトはトロフェオだけでなく、グループAクラス5向けの高性能バージョンのチューニングキットも販売しており、エンジンの排気量を1,147 ccまで拡大し、最高出力を108 PSに引き上げるチューニングが施されました。この仕様では、プント用の6速トランスミッションとの組み合わせにより、最高速193.5 km/hに達する性能を誇りました。

まとめ

セイチェントは、イタリアのモータリゼーションを象徴する車両として、またフィアットの歴史において重要な役割を果たしたモデルです。コンパクトでありながら、頑丈な作りとスタイルを兼ね備えたセイチェントは、多くのドライバーに楽しまれました。その後もフィアットの新しいモデルに道を譲りましたが、セイチェントの存在は今なお多くの自動車ファンに記憶されています。

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