フィリップ・シェリダン

フィリップ・ヘンリー・シェリダン：激戦を生き抜いた将軍の生涯

フィリップ・ヘンリー・シェリダン（1831年3月6日 - 1888年8月5日）は、アメリカ南北戦争で北軍の将軍として名を馳せた軍人です。その昇進の速さとユリシーズ・S・グラント将軍との緊密な関係は特筆すべき点です。シェリダンはシェナンドー渓谷の戦いで重要な役割を果たし、ロバート・E・リー将軍の降伏にも貢献しました。また、彼はイエローストーン国立公園の開発と保護にも尽力しました。彼の功績を称え、アメリカ陸軍のM551シェリダン空挺戦車にその名がつけられました。

生い立ち

シェリダンはニューヨーク州オールバニーで、アイルランドからの移民であるジョンとメアリー・ミーナ・シェリダン夫妻の間に生まれました。彼は6人兄弟の3番目であり、オハイオ州サマセットで成長しました。エイブラハム・リンカーンは、シェリダンを「褐色のがっしりした男、足首がかゆければ屈むことなく掻くことができる長い腕」と評しました。リンカーンの言葉はシェリダンの外見の特徴をユーモラスに捉え、彼の人物像を鮮やかに伝えています。

シェリダンは、若い頃から様々な職を経験しました。雑貨店の小間使いから始まり、織物店の店員や記帳係として働きました。1848年、彼は店の顧客であった下院議員トーマス・リッチェイの推薦を得て、アメリカ陸軍士官学校（ウェストポイント）に入学しました。しかし、ウェストポイントではクラスメートとの喧嘩で1年間の停学処分を受けるというトラブルも経験しています。停学の原因は、クラスメートのウィリアム・R・テリルに広場で侮辱されたことに腹を立て、銃剣で彼を突き刺そうとしたことでした。1853年、シェリダンは52人中34番の成績で卒業しました。

卒業後、シェリダンはテキサス州のフォート・ダンカンの第1歩兵連隊に少尉として任官し、その後カリフォルニア州フォート・レディングの第4歩兵連隊に転属しました。第4歩兵連隊での任務は、北西部太平洋岸が中心でした。1855年のウィラメット渓谷の測量を皮切りに、ヤキマ戦争やロング・リヴァー戦争を経験し、戦闘能力やインディアン種族との交渉能力を磨きました。1857年には、オレゴン準州で鼻に銃弾を受けて負傷するという経験もしています。この期間中、彼はクリクタット族の酋長の娘であるシドナヨー（白人の友人からはフランシスと呼ばれていた）と親密な関係を築きました。南北戦争直前の1861年3月には中尉に昇進し、サムター要塞の戦いの直後の5月には大尉に昇進しました。

南北戦争での活躍

1861年の秋、シェリダンはセントルイス近くのジェファーソン・バラックスに移動し、第13歩兵連隊に配属されるとの命令を受けました。サンフランシスコ、パナマ運河、ニューヨークを経由して、故郷のオハイオ州サマセットに戻りました。彼は南北戦争において、その軍事的才能を遺憾なく発揮し、北軍の勝利に大きく貢献しました。

インディアン戦争と論争

南北戦争後、シェリダンは西部方面でのインディアン討伐に関わるようになります。彼はジョージ・アームストロング・カスターを第7騎兵隊の隊長に任命しました。南西部における「アパッチ戦争」では、ジェロニモ率いるアパッチ族に対し徹底的な殲滅作戦を展開しました。彼は、部下のジョージ・クルックが採用したインディアン斥候を嫌い、クルックの作戦がアパッチ討伐を遅らせていると公然と批判しました。このことでクルックは解任と転属を願い出る事態となりました。シェリダンの後任として派遣されたネルソン・マイルズは、シェリダンから「捕虜にするか、さもなくば殺せ」という厳命を受け、ジェロニモたちを追い詰めていきました。

シェリダンのインディアン政策は、その過激さから批判も多く、特に有名なのが「良いインディアンは死んだインディアンだけだ」という発言です。コマンチ族の一部の降伏した際に、酋長のトサウィが「良いインディアンもいる」と語ったことに対し、シェリダンは「私の知っている良いインディアンは必ず死んでいた」と返しました。この発言は、後にチャールズ・ノルドストローム中尉によって「良いインディアンは死んでいるインディアンだけだ」と広められ、アメリカ中に知られるようになりました。この人種差別的発言は、アングロサクソン人によって度々使われるようになり、彼のインディアンに対する強硬な姿勢を象徴する言葉となりました。しかし、この発言の起源については、ジェームズ・M・キャバノー下院議員が最初であるという説も存在します。

シェリダンの生涯は、その軍事的才能と同時に、インディアンに対する過激な政策という両面を持ち合わせていました。彼の功績は、アメリカの歴史において重要な位置を占め、その名は今も語り継がれています。

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