フィル・ニークロ

フィリップ・ヘンリー・ニークロ

フィリップ・ヘンリー・ニークロ（Philip Henry Niekro）は、1939年の春にアメリカ合衆国オハイオ州ブレインで生まれ、2020年末にその生涯を閉じた伝説的なプロ野球選手です。彼はメジャーリーグベースボール（MLB）で名を馳せ、特に「ナックルボール」と呼ばれる独特の投球スタイルで知られていました。ニークロは右投右打の投手で、彼のことを指して「Knucksie」と称することもあります。彼の技術は数多くの選手やファンに影響を与え、今日でもその名は語り継がれています。

彼は1958年にミルウォーキー・ブレーブスと契約し、テストを経て1964年、サンフランシスコ・ジャイアンツ戦でメジャーデビューを果たしました。ニークロは28歳で初めての10勝を記録し、その後、1986年までの19年間で、シーズンごとに2桁勝利を上げるなど、強力な投手としての道を歩みました。特に印象的なのは、1969年、1974年、1979年の3シーズンにおいて20勝を達成したことです。1981年を除いて、毎年200イニング以上を投げ続け、さらには300イニングを超える登板も数回経験するなど、非凡なスタミナと耐久力を持つ選手でした。

ニークロの兄弟であるジョー・ニークロもまた投手として成功を収め、通算221勝を記録しています。兄弟揃って通算539勝は、現在でもMLBとしての最多勝利数です。ニークロ兄弟は1979年の日米野球でも日本を訪れ、ナックルボールの威力を披露しました。

彼のキャリアの中で、1973年8月5日にはサンディエゴ・パドレス戦でノーヒットノーランを達成するなど、投手としての記録を次々に塗り替えていきました。また、守備面でも優れた成績を収め、ナショナルリーグのゴールドグラブ賞を5回獲得しました。さらに1980年にはロベルト・クレメンテ賞も受賞し、スポーツマンシップと人道的な成果も評価されました。

1983年にはブレーブスから戦力外通告を受けたものの、翌年そのスタイルや成績は再評価され、背番号『35』はブレーブスの永久欠番となりました。1984年からはニューヨーク・ヤンキースへ移籍し、1985年には兄弟揃って同チームでプレイ。1985年10月6日にはトロント・ブルージェイズ戦での完封勝利をもって、通算300勝を達成しました。この時、彼は46歳と189日での達成となり、当時のMLB史上最年長という記録を打ち立てました。45歳の誕生日を迎える直前での快挙は、彼の抜群のパフォーマンスを証明するものでした。

その後、1986年にはクリーブランド・インディアンスに移籍することとなりますが、同年のシーズン最終戦でブレーブスとの契約で引退試合を行い、48歳という年齢ながら公式戦に出場しました。彼は40歳を超えて121勝を挙げ、その記録はMLB史上の偉業の一つです。

ニークロは選手生活を通じてワールドシリーズに出場したことはなく、ポストシーズンに出たのも1969年と1982年の2度だけでした。通算3342奪三振は歴代10位を記録し、5404.1イニングの投球回数はMLBの歴史の中で4位（1920年以降に在籍した投手としては1位）の座を占めています。

1993年に初めて殿堂入りの選考を受けるも叶わず、しかし1997年にはついにアメリカ野球殿堂への名を刻むこととなりました。彼の甥であるランス・ニークロもメジャーリーグで選手としてキャリアを積んでいます。

2020年、ニークロはがんで81歳の生涯を終えましたが、その名は今なお多くの野球ファンに愛されています。弟がナックルボールの技術を受け継いでいたことを考えると、ニークロ家の野球への影響は計り知れません。

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